【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
 卵から生まれた死骸虫は、幼虫期を経て成虫になるまで、二、三十年の月日がかかる。しかし一度成虫になってしまえばその生命力は普通の虫より遙かに強く、また繁殖能力も非常に高い。

 羽化の時期が重なると、その個体数は数千、数万、ひどい時には数億規模にまで膨れ上がるという。
 しかも基本的に単独行動するバッタと違い、死骸虫は積極的に集団を形成する。

 五年前、数万匹の死骸虫の群れがグランフェリシア王国を襲ったのだと、マリアベルは語った。

『昔からこの土地に住んでいるアタクシたち妖精は、死骸虫の群れにもある程度対抗できたわ。だけど人間たちは大規模な蝗害に対処できなかったのよ……』

 農作物は食い尽くされ、国中が深刻な食糧難に陥った。蝗害はなかなか終息せず、飢饉によって多くの人々が命を落としたそうだ。
 悪夢のような痛ましい光景だったわと、マリアベルは沈んだ声で呟いた。

(そんな恐ろしい災害が、また起きちゃうのかな……?)

『大丈夫。国のお偉いさん方だって、お馬鹿ではありませんもの。五年前の教訓を活かして対処するでしょう。現に一度は駆除に成功したんですから、今回は問題ないわ』

「うん……」

『暗い顔はおよしなさいな! 未来の不幸を案じて不安になっていたら、心が保ちませんわよ。ほら、ポーラが来るまで、もうひと眠りしましょう』

 マリアベルに促され、セレスティアはベッドの中にもぐりこんだ。
 おやすみと挨拶を交わしたものの、胸の奥がざわついて一向に寝付けない。

(急にお父様が出張に行っちゃったのも、死骸虫の問題を解決するためだよね……)

 心の声でマリアベルを起こしてしまわないよう、聞こえませんようにと念じながら考えを巡らせる。

(万が一に備えて、おばあちゃんから教わった駆除剤、作っておこうかな。そのためには材料を揃えないと。それと、お父様が帰ってきたら状況を訊いて……。あっ、でも急に質問したら怪しいよね? うーん、どうやって聞き出そう……)

 頭を悩ませているうちに日はすっかり昇ってしまった。
 隣ではマリアベルが『すーすー』と寝息を立てている。先程まで悲惨な蝗害の話をしていたのに、なんとも暢気というか、肝が据わっている。これが人生経験の差というやつだろうか。


 結局セレスティアは二度寝できず、その日はずっと眠たい一日を過ごす羽目になったのだった。


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