転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
『……アタクシは、随分長いこと見かけていないわね。アナタたちは?』
マリアベルに問いかけられた妖精たちも、みな首を横に振る。
彼らはなにも言わなかったが、暗い表情から察するに《緑の民》はあの夜を最後に、全員この世を去ってしまったのだろう。
セレスティアの目から止めどなく涙がこぼれ落ちる。
前世の記憶は〝知識〟として残り、感情の核は今世のセレスティアだ。
それでも魂の中に、あの少女の心もわずかながら残っているのだろう。
まるでセレスティア自身が大切な人を奪われたかのように、悲しくて堪らなかった。
『泣きたい時は思う存分お泣きなさい。けれどね、セレスティア。いつまでもメソメソしていたら、いけませんわよ。アタクシたちと違って、アナタたち人間の寿命はうんと短いんですからね』
マリアベルがぷにぷにの肉球でセレスティアの頬を撫でながら、優しい声でそう告げた。
その励まし方は、厳しくも優しかった祖母を彷彿とさせるもので、泣き止みたいと思うのに涙が次から次へと溢れて止まらない。
えぐっ、えぐっと、しゃくり上げていると、再びマリアベルがゆったりとした口調で話しかけてくる。
『アタクシたち妖精もね、命を終えたら妖精王のお力で生まれ変わるんですの。たまに、アナタみたいに前の記憶を持って、またこの地に生まれ落ちる者もいるんですのよ』
「そうなの?」
『ええ。昔、前世の記憶があるアタクシの知り合いが言っていたんですの。──【人生をやり直せる、奇跡みたいなこの機会。めいっぱい楽しまなきゃ損だ】って』
「やりなおせる……きせき……」
『そうよ。せっかく生まれ変わったんですもの。前回の人生でできなかったこと、今世でたくさんおやりなさい。いのち短し、人生を謳歌せよ、ですわよ!』
「うん……そうだね!」
悲しみに沈んでいたセレスティアの心に光がともり、身体の奥底から力が湧いてくる。
散っていった《緑の民》の分まで頑張って生きようと、前世の自分の心も前向きになってくれたのかもしれない。
「ありがとう、まりあべる。みんなもね! ──わたし、きめたよ」
セレスティアは目尻に引っかかっていた涙を拭うと、両手をぎゅっと握り締めた。
「こんどこそ、いきのびる! たくさん、しあわせに、なるっ!」
願いは声に出した方が叶うのだと前世の祖母が言っていた。
その言葉を信じ、セレスティアは小さな指を折りたたんで数えながら、今世でしたいことを思いつくまま口にしていく。
「あのね、わたし、ひとがたくさんいるマチに、いってみたいの! あと、がっこうも、いってみたい! それと、いろんなもの、みて、たべて……あっ、おさけ! おさけも、のんでみたい!」
『ふぉっ、ふぉっ、ふぉ。酒は大人になってからじゃぞ、お嬢ちゃん』
『頑張って長生きしないといけんのぉ』
『飲める年になったら、わしらがいい酒とツマミを用意してやろう』
ブラウニーのお爺さんらが朗らかな微笑みを浮かべ、三人声を揃えて『将来が楽しみじゃのぉ』としみじみ呟いた。
シルフたちも『応援しているワ、セレスティア』と歌うように囁き、マリアベルも『頑張りなさいな』とエールを送ってくれる。
気のいい隣人たちの声援に笑顔で頷いたその時、室内にコンコンとノックの音が響きわたった。
ポーラが食事を持ってきてくれたのだろう。
肩に止まっていたシルフたちが飛び去り、マリアベルとブラウニー三人衆もいそいそとベッドを下りていく。
「はーい!」
元気よく返事をしたセレスティアは、扉が開いた瞬間、時が止まったかのようにその場で固まった。
マリアベルに問いかけられた妖精たちも、みな首を横に振る。
彼らはなにも言わなかったが、暗い表情から察するに《緑の民》はあの夜を最後に、全員この世を去ってしまったのだろう。
セレスティアの目から止めどなく涙がこぼれ落ちる。
前世の記憶は〝知識〟として残り、感情の核は今世のセレスティアだ。
それでも魂の中に、あの少女の心もわずかながら残っているのだろう。
まるでセレスティア自身が大切な人を奪われたかのように、悲しくて堪らなかった。
『泣きたい時は思う存分お泣きなさい。けれどね、セレスティア。いつまでもメソメソしていたら、いけませんわよ。アタクシたちと違って、アナタたち人間の寿命はうんと短いんですからね』
マリアベルがぷにぷにの肉球でセレスティアの頬を撫でながら、優しい声でそう告げた。
その励まし方は、厳しくも優しかった祖母を彷彿とさせるもので、泣き止みたいと思うのに涙が次から次へと溢れて止まらない。
えぐっ、えぐっと、しゃくり上げていると、再びマリアベルがゆったりとした口調で話しかけてくる。
『アタクシたち妖精もね、命を終えたら妖精王のお力で生まれ変わるんですの。たまに、アナタみたいに前の記憶を持って、またこの地に生まれ落ちる者もいるんですのよ』
「そうなの?」
『ええ。昔、前世の記憶があるアタクシの知り合いが言っていたんですの。──【人生をやり直せる、奇跡みたいなこの機会。めいっぱい楽しまなきゃ損だ】って』
「やりなおせる……きせき……」
『そうよ。せっかく生まれ変わったんですもの。前回の人生でできなかったこと、今世でたくさんおやりなさい。いのち短し、人生を謳歌せよ、ですわよ!』
「うん……そうだね!」
悲しみに沈んでいたセレスティアの心に光がともり、身体の奥底から力が湧いてくる。
散っていった《緑の民》の分まで頑張って生きようと、前世の自分の心も前向きになってくれたのかもしれない。
「ありがとう、まりあべる。みんなもね! ──わたし、きめたよ」
セレスティアは目尻に引っかかっていた涙を拭うと、両手をぎゅっと握り締めた。
「こんどこそ、いきのびる! たくさん、しあわせに、なるっ!」
願いは声に出した方が叶うのだと前世の祖母が言っていた。
その言葉を信じ、セレスティアは小さな指を折りたたんで数えながら、今世でしたいことを思いつくまま口にしていく。
「あのね、わたし、ひとがたくさんいるマチに、いってみたいの! あと、がっこうも、いってみたい! それと、いろんなもの、みて、たべて……あっ、おさけ! おさけも、のんでみたい!」
『ふぉっ、ふぉっ、ふぉ。酒は大人になってからじゃぞ、お嬢ちゃん』
『頑張って長生きしないといけんのぉ』
『飲める年になったら、わしらがいい酒とツマミを用意してやろう』
ブラウニーのお爺さんらが朗らかな微笑みを浮かべ、三人声を揃えて『将来が楽しみじゃのぉ』としみじみ呟いた。
シルフたちも『応援しているワ、セレスティア』と歌うように囁き、マリアベルも『頑張りなさいな』とエールを送ってくれる。
気のいい隣人たちの声援に笑顔で頷いたその時、室内にコンコンとノックの音が響きわたった。
ポーラが食事を持ってきてくれたのだろう。
肩に止まっていたシルフたちが飛び去り、マリアベルとブラウニー三人衆もいそいそとベッドを下りていく。
「はーい!」
元気よく返事をしたセレスティアは、扉が開いた瞬間、時が止まったかのようにその場で固まった。