【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
第4話:王族失格
「半ば強引に縁談をまとめたのは悪かったと思っているよ。だが、ヒルデガルトの頼みを無下にはできなかったんだ」
「ええ。殿下が奥様の尻に敷かれているのは重々承知しております」
「……ううっ。お前、今日はいつにも増して僕に遠慮がないな。さては医薬府の件を押しつけたこと、怒っているな?」
「別に怒ってはいません。忙しい時に仕事を増やしやがって、とは思っていますが」
「十分怒っているじゃないか!! 仕方ないだろう。あのままメディス侯爵を医薬府の副長官に据えたら、ドゴール侯爵との権力争いで駆除剤の開発どころじゃなくなる。そうなれば蝗害の被害拡大は必至だ。恨むなら僕じゃなく、出世のことしか頭にないメディス侯爵を恨んでくれ! だいだいなぁ──」
先程までの王子然とした振る舞いはどこへやら。騒がしく捲し立てるスチュアートの言い訳を、アルフレッドは静かに頷きながら聞き流した。
この王子から突然厄介事を頼まれるのは毎度のことだ。
クリスティーヌとの結婚も、スチュアートと、彼の妻である第二王子妃ヒルデガルトに押しつけられたようなものだった。
『ねぇ、アルフレッド。再婚するつもりはない?』
急遽王宮に呼ばれ、第二王子妃ヒルデガルトからそう尋ねられたのは、今から二ヶ月ほど前のこと。
彼女は親しくしているクリスティーヌが老貴族の愛妾にされるかもしれないと知り、ひどく胸を痛めていたそうだ。そしてどうにかして助けてやりたい、せめてもっとましな相手に嫁がせてやりたいと考えていたのだという。
そこで白羽の矢が立ったのが、アルフレッドだった。
前妻を失い、いまだ独身。爵位も身分も申し分なく、身元も確か。メディス侯爵家の令嬢を迎えるにあたって、これ以上の適任者はいないと判断されたようだ。
加えて、舞い込む縁談に辟易しているアルフレッドには形ばかりの妻が、幼いセレスティアには新しい母が必要だろう──そんな、第二王子夫妻のお節介も多分に含まれていたに違いない。
『わたくしはね、クリスティーヌだけでなく、アルフレッドにも幸せになってほしいのです。貴方は愛するスチュアート様の一番の家臣で、そして親友ですもの。もちろん、貴方の娘のセレスティアの幸福も願っているわ』
ヒルデガルトは穏やかな微笑を浮かべてそう告げた。
ちなみにその時、同席していたスチュアートが妻の言葉に首がもげそうなほど頷いていたのを今でも覚えている。あれは家庭内での権力関係が一目で分かる光景だった。
ともあれ、そういった経緯で再婚の打診をされたアルフレッドは、クリスティーヌが実家と縁を切り、リシャール公爵家に決して害を及ぼさないと第二王子夫妻に誓いを立てることを条件に、彼女を迎え入れる決断をした。
いくら幼なじみとはいえ、スチュアートは主君。その最愛の奥方であるヒルデガルトの頼みを、家臣であるアルフレッドが断るのは憚られたのだ。
「時に、殿下」
「ん?」
「こたびの件、国王陛下とエルネスト殿下はなんと仰せで?」
「父上はいつもと同じさ。『お前に任せた』、それだけだ。兄上に至っては突然外交予定を入れて近々国を離れるつもりらしい。まぁ、本人は公務だと言い張っているが、あれは確実に国外へ避難するつもりだな」
「左様でございますか」
「父上も兄上も、相変わらずだろう?」
立場上、国王陛下と第一王子を貶める発言はできないため、アルフレッドは返事をせず無言の肯定に留めた。