【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
スチュアートの祖父にあたる現国王テオドール陛下は、御年七十歳。
とうに王座を退いてもよい年齢だが頑なに譲位はせず、かといって国政にも関心を示さない。国王の肩書きと権力を保持したまま公務はせず、王都郊外にある離宮にて遊興の日々を送っている。
そんな国王陛下の気質を色濃く受け継いだのが、スチュアートの兄である第一王子エルネスト。
彼もまた王位継承権第一位という地位にありながら、責任は弟に押しつけ、成果のみ我が物にする。
口にこそ出さないが、アルフレッドからすれば、ふたりとも王族失格である。
ゆえに、国の面倒事を一手に引き受けざるを得ない幼なじみのスチュアートを憐れに思い、アルフレッドは毎度、なんだかんだと言って手を貸してしまうのだ。
「殿下、ひとつお許しをいただきたいことがございます」
「なんだ?」
「しばしリシャール領に戻ってもよろしいでしょうか?」
「それは構わないが……。ああ、さては家族が恋しくなったな? そういや新婚だものな。新妻と愛を深めたい時期に一ヶ月も王都に拘束して悪か
った。いいぞ、いくらでも行ってこい」
「違います。仕事のためです。我が国の製薬技術と既存の薬剤では、もはや死骸虫に有効な駆除剤は作れないのではと考えております」
「異国の薬師の知恵を借りる算段だな?」
「はい。我が領は港街が多い土地柄、内陸にある王都より異国の人や情報、ものが集まりやすい傾向にあります。なにか有力な手がかりを得られぬか、一度自領に戻って探りたく」
「分かった」
「議会の会期中に王都を離れてしまい、申し訳ございません」
「謝るべきはお前に仕事を押しつけている僕の方だ。すまんな」
「なにをおっしゃいますか。殿下の政を支えることこそ、政務府の長たる俺の務め。気にしないでください」
最後の言葉はあえてやや砕けた口調で告げると、申し訳なさそうにしていたスチュアートの表情がふっと緩んだ。
「そういえば、もうすぐ誕生の祝祭だな」
「ああ、もうそんな時期ですか」
誕生の祝祭は別名『こどもの日』とも呼ばれ、子供たちの幸せと健やかな成長を願って制定されたグランフェリシア王国の記念日だ。
「忙しいだろうが、きちんと娘も構ってやれよ。無関心でいたら、そのうち『お父様近寄らないで』なんて言われて、露骨に避けられるようになるぞ」
最近ようやくまともに会話できるようになったのに、すでに一ヶ月も屋敷を不在にしている。セレスティアに対しては決して無関心なわけではないが、そう取られてもおかしくない行動をしている自覚はあった。
「これでも、子育てに関しては僕の方が先輩だからな。助言は素直に聞いておいて損はないぞ」
「ご忠告、痛み入ります」
また以前のように顔を合わせただけでセレスティアに怯えられ、泣かれる日々に逆戻りするのはごめんだ。
一礼して執務室を出たアルフレッドはいち早く自領へ戻るため、その日から不眠不休で残務と引き継ぎを終え、家族の待つリシャール公爵邸へ向けて旅立つのであった。
とうに王座を退いてもよい年齢だが頑なに譲位はせず、かといって国政にも関心を示さない。国王の肩書きと権力を保持したまま公務はせず、王都郊外にある離宮にて遊興の日々を送っている。
そんな国王陛下の気質を色濃く受け継いだのが、スチュアートの兄である第一王子エルネスト。
彼もまた王位継承権第一位という地位にありながら、責任は弟に押しつけ、成果のみ我が物にする。
口にこそ出さないが、アルフレッドからすれば、ふたりとも王族失格である。
ゆえに、国の面倒事を一手に引き受けざるを得ない幼なじみのスチュアートを憐れに思い、アルフレッドは毎度、なんだかんだと言って手を貸してしまうのだ。
「殿下、ひとつお許しをいただきたいことがございます」
「なんだ?」
「しばしリシャール領に戻ってもよろしいでしょうか?」
「それは構わないが……。ああ、さては家族が恋しくなったな? そういや新婚だものな。新妻と愛を深めたい時期に一ヶ月も王都に拘束して悪か
った。いいぞ、いくらでも行ってこい」
「違います。仕事のためです。我が国の製薬技術と既存の薬剤では、もはや死骸虫に有効な駆除剤は作れないのではと考えております」
「異国の薬師の知恵を借りる算段だな?」
「はい。我が領は港街が多い土地柄、内陸にある王都より異国の人や情報、ものが集まりやすい傾向にあります。なにか有力な手がかりを得られぬか、一度自領に戻って探りたく」
「分かった」
「議会の会期中に王都を離れてしまい、申し訳ございません」
「謝るべきはお前に仕事を押しつけている僕の方だ。すまんな」
「なにをおっしゃいますか。殿下の政を支えることこそ、政務府の長たる俺の務め。気にしないでください」
最後の言葉はあえてやや砕けた口調で告げると、申し訳なさそうにしていたスチュアートの表情がふっと緩んだ。
「そういえば、もうすぐ誕生の祝祭だな」
「ああ、もうそんな時期ですか」
誕生の祝祭は別名『こどもの日』とも呼ばれ、子供たちの幸せと健やかな成長を願って制定されたグランフェリシア王国の記念日だ。
「忙しいだろうが、きちんと娘も構ってやれよ。無関心でいたら、そのうち『お父様近寄らないで』なんて言われて、露骨に避けられるようになるぞ」
最近ようやくまともに会話できるようになったのに、すでに一ヶ月も屋敷を不在にしている。セレスティアに対しては決して無関心なわけではないが、そう取られてもおかしくない行動をしている自覚はあった。
「これでも、子育てに関しては僕の方が先輩だからな。助言は素直に聞いておいて損はないぞ」
「ご忠告、痛み入ります」
また以前のように顔を合わせただけでセレスティアに怯えられ、泣かれる日々に逆戻りするのはごめんだ。
一礼して執務室を出たアルフレッドはいち早く自領へ戻るため、その日から不眠不休で残務と引き継ぎを終え、家族の待つリシャール公爵邸へ向けて旅立つのであった。