【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
「セレスティアさん、大丈夫ですか?」

「う、うん……わたしは、だいじょぶ。でも、おとうしゃまが……わたしの、せいで……。おとうしゃま、おきてぇ! タックルして、ごめんなしゃい……! ふえぇえ、しんじゃ、いやぁ~!」

 半泣きで名前を呼べば、アルフレッドのまぶたがピクッと動き、ゆっくりと持ち上がる。

「……生きている。問題は、ない……が、さすがに……」

 眠い──そう小声で呟いたきり、アルフレッドは目を閉じて沈黙してしまった。
 そばに片膝をつき様子を確かめたジェラールが、セレスティアの方へと顔を向けて微笑む。

「ご安心ください、お嬢様。旦那様はお眠りになっているだけでございます」

「そうなの? よかったぁ……」

 ホッと詰めていた息を吐き出すセレスティア。その隣で同じように安堵の表情を浮かべたクリスティーヌが、使用人らに向き直った。

「旦那様を寝室へお願いします。かなりお疲れのご様子ですし、頭を打っているかもしれません。ジェラールさん、念のため先生に往診に来ていただきたいのですが、お任せしてもよろしいでしょうか?」

「もちろんでございます、奥様。すぐに手配いたします」

 丁寧かつ迅速なクリスティーヌの差配を受けて、使用人らが素早く行動を開始する。
 まだわずかに意識のあったアルフレッドは、男性使用人の肩を借りて自力で寝室へと歩いていった。

 その後ろ姿を見送りながら、セレスティアは果てしない衝撃を受けていた。
 
 いついかなる時も、まるで大樹のように揺らがないアルフレッドが、まさか三歳児の突進程度で倒れてしまうなんて。
 それほどまでに彼を追い詰め、疲弊させる問題が発生しているに違いない。
 
 思い当たるとすれば、大量発生が予想されている死骸虫の問題。
 不眠不休で事に当たるほど、対策が難航しているのだろうか。
 
 セレスティアは手をきゅっと握り締め、クリスティーヌのドレスの裾をきゅっと摘まみ、ちょんちょんと控えめに引っ張った。

「セレスティアさん?」

「あのね。おとうしゃまのおそばに、いたいの。うるしゃくしないから、おねがい、しますっ!」

 目に涙を溜めながら見上げれば、クリスティーヌは慰めるようにセレスティアの頭を撫でた。

「分かりました。お目覚めになるまで、一緒におそばにいましょうか」

「うん!」

 大きく頷いたセレスティアは、クリスティーヌと手を繋いで歩き出す。

(マリアベル。ひとつお願い事があるの)

 念話で声をかけると、隣をついてくるマリアベルが小首を傾げた。

『なにかしら?』

(あのね──)

 セレスティアの頼みを聞き届けたマリアベルが『任せてちょうだいな』と答え、分かれ道で逆の方向へと進んでいく。

(任せたよ、マリアベル)

 頼れる相棒猫に願いを託したセレスティアは、クリスティーヌとともにアルフレッドの寝室に足を踏み入れた。

 
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