【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜

第6話:転生幼女、うごきます


 しんとした薄暗い室内に、かすかな寝息が聞こえてくる。
 アルフレッドは固く目を閉ざし、ほとんど身じろぎもせず熟睡していた。

 往診に来た医師によると、倒れた原因は疲労と寝不足で、幸い怪我や病気は見つからなかった。

 ゆっくり休むようにと言われたものの、診察の際に目覚めたアルフレッドは「十分眠って回復した」などと言い、医師の制止を振り切って執務室へ行こうとする仕事中毒(ワーカホリック)

 これにはセレスティアも黙っていられず、「だめ! ねてくださいっ!」と一生懸命に引き止めれば、幼い娘の懇願を無下にはできなかったのだろう。アルフレッドはしぶしぶ頷き、ベッドへ戻ってくれた。

 そうして軽食を取り処方された薬を飲んだ彼は、現在もぐっすり眠りつづけている。
 やはり『回復した』というのは強がりだったようだ。

「ん……」

 悪夢でも見ているのか、時折苦しげに眉根を寄せるアルフレッド。
 寝ている間も、なにかに頭を悩ませているのかもしれない。

(お父様のお役に立ちたいな)

 今の自分に──この小さな身体で、なにができるだろう。
 ベッドサイドの椅子に座り、魘されるアルフレッドの寝姿を見守っている間、セレスティアはずっとそればかり考えていた。

 すると、不意に上からドタドタとなにかが走り回るような音が聞こえてきた。
 物音はすぐさまやみ、かと思えばまた響き出し、止まるのを繰り返す。

 天井から降り注ぐ騒音に、セレスティアの隣に座っていたクリスティーヌが首を傾げながら上を向いた。

「この音、なんでしょう? ネズミでもいるのかしら」

「わ、わかんないー。でも、こんなにうるさいと、おとうしゃま、おきちゃいそうだなぁー」

 と言いつつも、目の前のアルフレッドはぴくりともせず、目覚める様子はない。
 医師から渡された薬には、強制的に身体を休ませるための眠り成分が入っていたのかもしれない。

「あぁ、うるしゃいの、こまるなぁー」

「そうですね。私、少し様子を見てきます。セレスティアさんはここで待っていてください」

 クリスティーヌは小声でそう告げ、立ち上がって寝室から出ていった。
 扉がパタンと閉まり、徐々に足音が遠ざかっていく。

 やがてなにも聞こえなくなった頃、セレスティアも静かに椅子から下り、アルフレッドを起こさないよう忍び足で出入り口へと向かった。
 ドアノブを握り、慎重に扉を開く。

 ギィ──……と響く、蝶番の軋み音。

「んん……」

(おっ、起きちゃった⁉)

 背後から呻き声が聞こえて振り返るも、幸いアルフレッドは目覚めたわけではなかったようだ。
 セレスティアは胸を撫で下ろし、外に出てゆっくりと扉を閉めた。

 ふぅと詰めていた息を吐き、額の汗を拭う。

(ひとまず脱出成功、いよぉし!)

 向かう先はアルフレッドが仕事場にしている書斎だ。

 限られた者しか出入りできないよう、彼が室内にいない時は廊下側の扉には鍵がかけられている。
 合鍵を持っているのは、ジェラールをはじめとした数名の使用人のみらしい。
 当主が伏せっている今は多分、施錠されているだろう。

 しかし、書斎に入る方法はもうひとつあるのだ。

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