【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
寝室を出てリビングを通り抜けたセレスティアは、おそらくこれだろうと思った扉をそっと開け、隙間から中を窺う。
壁一面に並ぶ本棚、部屋の奥に置かれた大きな執務机と椅子。
誰もいないのを確認して中に入ると、古めかしい紙やインクの匂いが鼻をかすめた。
(ここが、お父様の書斎……。わぁ、本がたくさん……)
仕事が終わってすぐにアルフレッドが休めるよう、書斎は当主の私室と続きの間になっている。廊下に面している正規の扉は閉ざされていても、私室側の扉は開いているだろうと予想したセレスティアの勘は当たっていた。
(えっと、お父様が帰ってきた時に持ってた鞄は…………あった!)
執務机の横に置かれた、なめらかな茶革の四角い書類鞄。
「かってにみて、ごめんなさい」
セレスティアは小さな声で謝ると、鞄を開けて目当ての書類を探した。
(あっ、これだ……!)
取り出したのは紐で綴じられた厚い書類の束。
一番上の紙には死骸虫と思しき虫の生体絵図が載っていた。
ふむふむと頷きながら目を落としていたセレスティアだが、ざっと十枚ほど捲ったあたりで顔を上げた。
(どーしよ! なに書いてるのか、全然分かんないっ!)
十三年間分の前世の知識を有してはいるものの、残念なことに《緑の民》は王国の共用語とは異なる言語文化を築いていた。
そのため、前世では読み書きができていたとはいえ、王国語がすらすら読めるわけではない。
とはいえ、王国語と《緑の民》の言葉は似ている単語も多々あり、おまけに最近はクリスティーヌから文字の読み書きを教わっている。
上達が早い、神童だと、クリスティーヌやポーラから絶賛されているセレスティアである。読んでみれば案外報告書の内容も理解できるのではと思っていたが。
(専門用語が、多すぎるぅ!)
一般大衆向けに平易な文章で書かれているならまだしも、これは博識な貴族議員向けの資料。
使用されている単語は難解で、おまけに持って回った表現も多く、セレスティアにはもはや長い文字列が、のたうち回る黒いミミズにしか見えなくなってきた。
(あぅ……どうしよう……)
アルフレッドを助けたい一心とはいえ、書斎に忍び込んで盗み見までしたのに収穫なし。これではただの悪い子だと、罪悪感で胸が押し潰されそうだ。
しかも最悪なことに、その感情の乱れに幼い身体が反応してしまったのか、じわりと目に涙が滲んできてしまった。
(うぅ……泣いている場合じゃないのに!)
ままならない我が身に苛立ちを覚えたその時──。
ガチャリと、背後から扉の開く音がした。
壁一面に並ぶ本棚、部屋の奥に置かれた大きな執務机と椅子。
誰もいないのを確認して中に入ると、古めかしい紙やインクの匂いが鼻をかすめた。
(ここが、お父様の書斎……。わぁ、本がたくさん……)
仕事が終わってすぐにアルフレッドが休めるよう、書斎は当主の私室と続きの間になっている。廊下に面している正規の扉は閉ざされていても、私室側の扉は開いているだろうと予想したセレスティアの勘は当たっていた。
(えっと、お父様が帰ってきた時に持ってた鞄は…………あった!)
執務机の横に置かれた、なめらかな茶革の四角い書類鞄。
「かってにみて、ごめんなさい」
セレスティアは小さな声で謝ると、鞄を開けて目当ての書類を探した。
(あっ、これだ……!)
取り出したのは紐で綴じられた厚い書類の束。
一番上の紙には死骸虫と思しき虫の生体絵図が載っていた。
ふむふむと頷きながら目を落としていたセレスティアだが、ざっと十枚ほど捲ったあたりで顔を上げた。
(どーしよ! なに書いてるのか、全然分かんないっ!)
十三年間分の前世の知識を有してはいるものの、残念なことに《緑の民》は王国の共用語とは異なる言語文化を築いていた。
そのため、前世では読み書きができていたとはいえ、王国語がすらすら読めるわけではない。
とはいえ、王国語と《緑の民》の言葉は似ている単語も多々あり、おまけに最近はクリスティーヌから文字の読み書きを教わっている。
上達が早い、神童だと、クリスティーヌやポーラから絶賛されているセレスティアである。読んでみれば案外報告書の内容も理解できるのではと思っていたが。
(専門用語が、多すぎるぅ!)
一般大衆向けに平易な文章で書かれているならまだしも、これは博識な貴族議員向けの資料。
使用されている単語は難解で、おまけに持って回った表現も多く、セレスティアにはもはや長い文字列が、のたうち回る黒いミミズにしか見えなくなってきた。
(あぅ……どうしよう……)
アルフレッドを助けたい一心とはいえ、書斎に忍び込んで盗み見までしたのに収穫なし。これではただの悪い子だと、罪悪感で胸が押し潰されそうだ。
しかも最悪なことに、その感情の乱れに幼い身体が反応してしまったのか、じわりと目に涙が滲んできてしまった。
(うぅ……泣いている場合じゃないのに!)
ままならない我が身に苛立ちを覚えたその時──。
ガチャリと、背後から扉の開く音がした。