【第一部完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
第7話:《緑の民》の秘薬
(だっ、誰っ⁉)
慌てて振り返ったセレスティアは、開いたドアの隙間からするりと身を滑り込ませてきた相棒の妖精猫の姿にホッと息をついた。
(なんだぁ、マリアベルかぁ……びっくりした……)
『あら、驚かせてしまったなら、ごめんあそばせ。アナタに頼まれた通りに屋根裏部屋で騒ぎを起こしてきましたけど、あれくらいの物音でよかったんですの?』
(うん! 音量もタイミングもバッチリ! あれ? でもまだ天井から音がするけど……)
『あぁ、代わってもらったんですのよ』
(代わってもらった? 誰に?)
『ほら、アナタが助けたあのボギー兄妹ですわよ。最初はアタクシひとりで物音を立てていたんですけどね、途中でやってきて【手伝う】って。悪戯はあの子たちの得意分野ですもの、ちょうどいいかと思って任せてきたんですの』
(そうだったんだ。あとでお礼を言わないと)
『それよりも、アナタの方はどうなんですの? なにか分かりまして?』
セレスティアは肩を落とし、ふるふると首を横に振った。
(成果、ゼロ)
『はぁ⁉ 今の今までなにやってたんですのよ!』
(だってこの報告書、思ったより難しくて読めないんだもん!)
『まったくもう! ほら、貸しなさいな』
後ろ足で立ったマリアベルが、セレスティアから手渡された紙の束を前足で器用に捲っていく。
(マリアベル、王国の共用語が読めるの?)
『ええ。長いことこの国に住んでいますもの。知っていて損はないですし、嗜みとして一応覚えたんですのよ』
(へえぇ、すごいねぇ)
『ふふん。まぁアタクシにかかれば、人間の言葉のひとつやふたつ習得するなんて楽勝ですわ』
マリアベルは誇らしげに胸を張り、再び物凄い速さで資料に目を通すと『なるほどね』と呟いた。
『ざっと目を通したところ、どうやら今年発生している死骸虫には、従来の駆除剤が効いていないみたいですわね。政府お抱えの薬師たちも新薬の開発を急いでいるみたいですけど、うまくいっていないようですわ』
(そんな……)
アルフレッドの憔悴具合から嫌な予感はしていたけれど、状況は想像していた以上に深刻なようだ。
(あっ、そこに駆除剤の成分表って載ってる?)
『ちょっと待ってくださいな。ええっと、成分表、成分表……ああ、これだわ。えっと、なになに……』
資料に目を落としたマリアベルが内容を読み上げようとしたその時、ハッと弾かれたように顔を上げた。
(マリアベル?)
『足音が聞こえる……。まずい! 近づいてきているわ!』
(ええっ⁉ たっ、大変!)