野いちご源氏物語 四六 椎本(しいがもと)
雪や(あられ)が降りしきるころは、とくに風の音が恐ろしい。
どこでも同じようなものだし、毎年吹いている風ではあるけれど、
<これが山里(やまざと)の風か>
と、たった今連れてこられた人のように姫君(ひめぎみ)たちは震えていらっしゃる。

女房(にょうぼう)たちは新年に期待している。
「年が変わりますからね、心細く悲しいお暮らしも変わるはずでございますよ。春が待ち遠しいこと」
などと言う人がいても、姫君たちは<そううまくはいくまい>と(あきら)めていらっしゃる。

山のお寺からお見舞いに来る人もいない。
これまで人の()()があったのは、(はち)(みや)様がときどきお寺に(こも)って修行(しゅぎょう)なさっていたからだもの。
八の宮様がお亡くなりになった今は、阿闍梨(あじゃり)からも連絡はない。

山荘(さんそう)にすっかり人気(ひとけ)がなくなって、仕方のないことではあるけれど姫君たちはお悲しい。
地元の住民がたまにご挨拶(あいさつ)に来るのさえ、それまでは何とも思わなかったのに、めずらしくてうれしくお思いになるほどよ。
年末ということで、(たきぎ)や木の実などを届けてくれるの。
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