野いちご源氏物語 四六 椎本(しいがもと)
阿闍梨(あじゃり)からひさしぶりに使者(ししゃ)がやって来た。
冬の間にたくさん必要になる(すみ)などを持ってきている。
「毎年(はち)(みや)様に差し上げておりましたから、お亡くなりになった途端(とたん)にやめてしまうのも悲しいことですので」
という伝言があった。
<こちらからは冬用の暖かい着物を送っていたのだった>
姫君(ひめぎみ)たちは思い出して、お返しにお贈りになる。

僧侶(そうりょ)たちが山道を登ってお寺へ帰っていく様子が、木々の合間(あいま)に見え隠れする。
姫君たちはお部屋の(はし)まで出て、泣きながらお見送りなさった。
父宮(ちちみや)様が出家(しゅっけ)してお寺にお移りになったというのなら、こうして人の行き来も多かったでしょうにね。それにどれほど心細くても、無理をすればお目にかかることもできたでしょうに」
それならどれほどよかったことかとご姉妹で語り合われる。

山の松の木に雪が積もっているのをご覧になって、大君(おおいぎみ)がおっしゃった。
「雪の松を見ながら行き来を待つのは、もう(むな)しいことになったわね」
「あの雪が父宮様でいらしたらよいのに。消えてもまた降り積もってくれるのだもの」
うらやましそうに雪を見つめて中君(なかのきみ)はお答えになる。
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