野いちご源氏物語 四六 椎本(しいがもと)
<年が明けたら内裏(だいり)で行事が続く。宇治(うじ)へはしばらく(うかが)えなくなるだろう>
と、年末に(かおる)(きみ)がお越しになった。
雪がひどく積もって、山荘(さんそう)を訪れてくる人はいない。
そんなころに薫の君ほどのご身分の方が、わざわざ宇治までご立派な行列でいらっしゃったのよ。
姫君(ひめぎみ)たちはありがたく思って、いつもより念入りに客席を整えさせなさる。

女房(にょうぼう)たちは喪中(もちゅう)用ではない火桶(ひおけ)を奥から取り出してきて、暖房の(すみ)を準備する。
(はち)(みや)様が生きていらしたころを思い出しますね」
「薫の君がお越しになるのを、いつも楽しみにお待ちになっていましたね」
などと(なつ)かしんでいる。

大君(おおいぎみ)は、やはり直接の会話はお気が進まない。
それでも薫の君が不満そうでいらっしゃるのでお話しなさった。
完全にうちとけたご様子ではないけれど、これまでのような一言だけのお返事ではなくて、少し長くお声をお聞かせになる。
理想的な姫君に感じられて、
(すだれ)越しの会話だけでは満足できそうにない。我ながらあきれてしまうな。こうして人情(にんじょう)愛情(あいじょう)に変わっていくのか>
とお思いになる。
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