野いちご源氏物語 四六 椎本(しいがもと)
こうなれば、薫の君は堂々と山荘を訪問できる。
音楽好きの若い貴族たちと、音楽を演奏しながら川を渡っていかれたわ。
向こう岸には、舟から山荘の敷地(しきち)に上がる橋などが風流(ふうちゅう)につくられている。
八の宮様のご趣味のよさが感じられて、貴族たちは()ずまいを(ただ)して舟から下りた。

宮様の山荘は、夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様の別荘とは雰囲気がまったく違う。
わざと山里(やまざと)らしい質素な家具でそろえられているの。
お客様をお迎えするということで、古くから伝わる楽器をいくつもお出しになった。
貴族たちはあれもこれもと弾いて遊んで、「桜人(さくらびと)」という曲を演奏する。

八の宮様は(きん)の名人として有名でいらっしゃる。
<この機会にお聞きしたい>
と貴族たちは思ったけれど、宮様は(そう)をお付き合い程度にお弾きになった。
薫の君以外は宮様の演奏を初めて聞く人ばかりだから、深い音色に感動していたわ。
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