野いちご源氏物語 四六 椎本(しいがもと)
(とうと)いご身分の匂宮(におうのみや)様は、気軽に動けるお立場ではない。
<私も山荘(さんそう)へ行きたかった>
と、夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様の別荘で(くや)しがっていらっしゃる。
我慢できなくなって、姫君(ひめぎみ)たち()てに、美しい桜の枝をお手紙と一緒にお(おく)りになった。

「同じ皇族(こうぞく)というご(えん)ですから、私とも仲良くしていただけたら」
とあるのを読んで、姫君たちはお返事にお困りになる。
「ちょっとしたご挨拶(あいさつ)でございましょう。おおげさに受け取って、お返事に時間がかかるのはよくありません」
と年老いた女房(にょうぼう)たちが申し上げるから、(はち)(みや)様は中君(なかのきみ)にお返事をお書かせになった。
「あなた様は都の旅人(たびびと)でいらっしゃいますもの、すぐにこんな山里(やまざと)からは去ってしまわれます。わざわざ私たちを訪ねてきてくださったわけではないのでしょう」
美しく上品にお書きになったわ。
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