恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
「動画撮りたいなら自分を撮れば良いでしょ? 一人旅のチャンネルってそんなもんでしょうが」

 動画内で″カメラの向きがー″とか、″スマホのインカメがー″とかやってるし。

「おねぇさん、頭わりーね」
「はいっ?」
「人気の旅チャンネルなんて、撮影する人間が同行してるもんだよ。勿論全部じゃないけどさ」

 男が馬鹿にしたように笑った。

「チャンネル主が川に歩いていく姿とか、山の上から車が移動する様子とか、ドローン使った山の背景とか素人の一人旅じゃ撮影は無理っしょ」

 自身のスマホを取り出し、私に旅の決意をさせた運命の動画、【三十歳、女一人で車中泊】を再生させた。

 ……た、確かに。
 言われてみれば、カメラを固定してたって難しいアングルの映像が所々ある。

「ところで、車中泊不慣れみたいだけど、その硬そうなマットで寝る気?」
「え?」

 男の視線が車内に移る。温泉から出たら休もうと準備していたものだ。

「長旅ならそれは腰に来るぞ。あと、貴重品をダッシュボードに置くのやめた方がいい」
「たまたま置いただけよ!」

 不躾に車内を見られて不愉快。
 私は貴重品を持って、車の鍵を掛けた。

「塩田さんでしたっけ? あなたもここに停泊するの?」
「いや、俺は飯食いのみ」
「良かった。キャンセルしなくて済む」
「は?」

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