恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
「仕事を認められるようになって、昇級に気を取られてるうちに、作るのが楽しくなくなった」

 塩田が「趣味を仕事にするからだ」と鼻で笑う。
 自分でもそう思う。

「それで退職したのか」
「他にもあるよ」

 私は、記事にしない条件で退職の理由を話した。
 長年の重労働で身体も気持ちも限界だったこと。
 そんな時に自分とは正反対の、女らしくて世渡り上手な高部さんに欲しかったポジションを奪われたのは、運命だったんだろう。

 体操座りをして聞いていた塩田の首が、項垂れた。
 ……え、やだ。
 泣いてる? 

「あんたって意外と感情移入しやすいの、ね……?」

 恐る恐る顔を覗き込むと、――そうじゃなかった。

「……スゥ……」

 小さな寝息。人に話させておいて、コヤツは眠っていたのだ。

「……んだよ、もぅ」

 気抜けして、私も横になる。
 歯を磨いたりしたいけど、人様の車なので我慢した。

 暖まらない、自分の車には戻りたくなかった。





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