恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
 しかし、そんな事は私には関係ない。
 社長の愛人だろうが、パティシエとしての経歴が浅かろうが、仕事さえやってくれれば、文句は無かったのだ。

 社長ゴリ押しの美人シェフに、始めは皆、浮足立ちし、気を遣っていたが――

「あれ? 高部さんは?」「さぁ」

 気が付いたら姿を消して夕方まで行方不明とかしょっちゅうだし、たまに工房にいても飾り付けのパートさんとダラダラお喋り。(明らかに仕事の邪魔をしている)
 かと思えば、突然、「新商品を開発したい」と、オーダーで慌ただしい私や他のプルミエ・コミ(ベテランシェフ)に適当な分量で仕込みをさせ、予測出来た失敗をギャンギャンと叱り散らかす。

「ここのパティシエって無能ばっか?!」

 続けて前職の製造スタッフを褒めちぎり、自分がいかに販売面で貢献していたかを語り出す。
 なら、売り子に戻れよ。
 店を潰す気か? ってくらい社長が高部さんの肩を持つものだから、「やっとられん」と辞めた男性パティシエも数人、私の仕事量はますます増えていくばかりだった。










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