恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
 あぁ、もう。
 スイーツ好きとか言ってなかった癖に。何でこんな嫌がらせみたいなことするの?

「いらっしゃいませー」

 付いていくと私の知らない店員が忙しそうに客対応をしていた。
 オープン記念で千円以上購入したらマカロンのプレゼント、ドリンク1杯サービスだと。そりゃ繁盛するわ。

「何がオススメだよ」
 
 女性だらけの店内で塩田はやはり目立つ。
 その隣でショーケースを眺め、「あ」と思わず声を出した私の視線の先には――

【グルテンフリーや健康志向の方へ 国産米粉のフルーツロールとシュークリーム】

 私が考案、製造して、どこの店舗でも売れ行きが良かった商品だ。
 辞めても扱っていてくれて嬉しい。――だけど、

【考案した高部シェフをフォローしてね】

 米粉スイーツの開発者として、写真とインスタのQRコード付きでパネルに紹介されていたのは、あの人だった。
 美人でお洒落で職人ぽくなくて、それでも社長に認められた私と正反対の人。

「美人シェフやん」

 塩田の呑気な声に苛立ちを覚え、「先に戻る」と私は一人店を後にした。

 辞めたパティシエの開発した商品を販売する権利は店にある。レシピもそう。
 分かっているのに、私の経歴まで消されたような気がして悲しかった。

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