恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
「分からない、でも、今日は何か悔しかった」

 正直な気持ちがポロッと出た。
 塩田は私の手を見つめている。

「痛くないなら、作ってみれば?」
「車内では無理だよ。冷やして固める位なら出来るけど」

 それに、お客様も、食べて欲しい人もいないのに、作る意欲が湧かないよ。
 その本音にも、

「俺がいるじゃん」

 塩田はサラッと返す。

「は、い?」
「俺、辛党だし、さっきのロールケーキみたいにマジで美味いのしか褒めないから、そんな奴でも食えるスイーツを旅の合間に作ってみたら面白いかもよ」
「面白い? 本当に?」

 はじめはただの被写体だったのに。

 近頃はチャンネル主として動画の質や評価が気になるし、何より撮影が楽しくなってきている。

「火が必要ならオートキャンプで試してもいいんじゃね? 俺、一応道具持ってるし」

 塩田の提案に、自然と胸が高鳴る。
 キャンプも焚き火も無縁な人生だったけど、二十九年も生きてると何が起こるかわからない。


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