恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
「……え」

 深い意味は無かったようで、相変わらずの塩田は紙皿にのせたスフレケーキを食え、と顎で命令する。
 私も何事もなかったかのようにフォークで一口分切り分けて、パクっと頬張った。
 味は悪くない。焦げた所以外はフワフワだ。

「はい」

 塩田にも差し出す。
 カメラを止めて、口を大きく開けるから入れてやった。
 仏頂面がみるみる緩んでいく。

「これも溶けるな」

 本当に美味しそうな顔をするから、こっちまで笑ってしまう。

 そこで私は気が付いた。

 やっぱり、誰かに美味しいって思って貰えるのが一番嬉しいんだって。

 片付けて、寝床の準備をしながら隣の塩田の車を眺める。まだシャットアウトされていない窓は眺め放題だ。
 やつは今日撮った動画の編集中らしい。
 パソコンに向かう塩田の姿が、淡いオレンジ色の灯りの中で幻想的な映画みたいに見える。

 見慣れた様子だけど、そろそろエンドロールなのかと思うと胸がギュッとなった。
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