恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
「はっ?! 家賃を来月から二万円引き上げ?」

 だけど、悪い事は続くもので、その日の夜にマンションのオーナーから理不尽な通知を受けた。

「嫌ならタイキョしてもいいんですよ?」

 抗議の電話を掛けても、変なイントネーションで「払わないなら出ていけ」としか言わない。噂ではマンション自体が外国人に買われたらしい。
 そう言えば、最近やたら外国人が建物に出入りしていたっけ。
 しかし、無職になった途端にこれはキツすぎる。

 実家に帰ろう、かな。

 年に一度正月に帰省していたが、妹が4年前に結婚してからは、何となく実家とは距離を置いていた。
 絵に描いたような平凡な両親で特に厳しくもなかったが、専門学校の学費や上京の際の費用など負担かけた分、「辞めたから戻る」とは言いづらかった。

 ……さて、どうしよう。

 お菓子作り以外の仕事はした事がなかった。かと言って、またどこかの製菓店に就職するには身体がポンコツだ。

 貯金は多少あるが、転居は痛い。
 布団に寝転がり、スマホでネットサーフィンしているうちに、たまに見る動画投稿サービスに落ち着いた。
 今まで見ていたのは、主に製菓のチャンネルだ。
 そして、時々、旅系を眺めたりしていた。

――22:22。

 スマホの時計がゾロ目になってこんな事でニヤついていると、オススメのチャンネルとして、
【三十歳、女一人で車中泊】というのが上がっていた。




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