恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
 塩田がミニ鉄プレートの固形燃料に火を付ける。

「ちょっと炙る位がいいんだよな」

 スルメの他にチーズ鱈も出してきた。親父みたいなアテも新鮮で美味い。
 チューハイが進み、ニ本目も飲み干しそうな勢いだ。

「ピッチ速くね? てか、強いの?」
「強くはない」

 パティシエは朝が早いし、二日酔いで製菓なんて無理だったから飲む気にならなかった。
 
 だけど【三十歳、女一人で車中泊】の一人晩酌を見てたら、とても美味しそうに感じて、ついストックしてしまっていた。

 ところがいざ旅を始めると、夜は気が張っていたのか晩酌まで気が回らない。
 趣味の車中泊とは気持ちのゆとりに違いがあるらしい。

「撮影すれば良かったな」

 グビグビとオヤジのように飲む私を見て、塩田が残念そうに言った。

「撮影撮影うっさいな」
「言ってないだろ、お前、酒乱か?」
「私の事、被写体としか見てない」
「……はい?」

 酔いが回っていた私は、理性が何処かに飛んで行ったみたい。

「こんなに近くにいるのに、女として見てくれない」

 泣きそうな声で、とんでもない事を口走っていた。







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