恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
 金山さんの″彼女″を否定しようとしたその時、

「金山さーん、サボってないでちゃんと働いてよー」

 と、覚えのある声が隣のグループから聞こえてきた。
 ギクリとしたのは、それが【パティスリー・モン・クール】の高部さんだったからだ。

 ……何で、よりによってこの人に会っちゃうの?

「やだ、元部下と再会!」

 高部さんが私に気が付き、これまた気に障る言い方をした。

「名前なんていったっけ?」

 長い髪を揺らしながら、嘲るように笑っている。
 ムッと来たが、シカトして準備を進めた。本当、嫌な女。

「すげーな、五年ぶりに会った俺と文哉の連れが知り合いなんて、しかもパティシエって。あ、俺は合コンで高ちゃんと仲良くなったんだけど」

 金山さんが高部さんを熱く見つめ、ロックオンしてるのが丸わかりだ。
 肩出しタイプの白いワンピースを纏った(寒くないのか)彼女を、塩田も無言で眺めていた。

 社長といい、男の人ってこんな女っぽいタイプが好きだよね。
 一人背を向けて、車から道具を取り出していると、急に、「あ!」と高部さんが甲高く声を上げた。

「ねねねね、もしかして車中泊しながらスイーツ作ってる動画上げてるのって、唐津さん?」

 名前覚えてるじゃないの。
 いや、そんな事より身バレしてしまっていた。












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