恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
「え」「いつの間に結婚したん?」

 二人が目を丸くする中、塩田が私を急かす。

「飯終わったら海で撮影するぞ。夕方のオーシャンビューは映えるんだ」 
「え? あ、はい」

 何か言いたげな高部さんをスルーして、私はいつもの如くパーカーを被って、エビの下ごしらえをする。
 真剣にカメラを向ける塩田を見て、何故か泣きそうになった。そして決意する。

「もう、隠さなくていいや」
 
 フードを脱ぎ、レンズに顔を向けた。

 もう怖くない。

 私の存在そのものを否定していたのは、私自身。

 仕事を辞めたのも目標を失った事も、人生の過程で必須だった。

 それを被写体として残してくれようとした塩田には感謝しかない。

 嘘でも、最後は、私に華を持たせてくれた。

 だから、ありのままの自分を見て貰いたいと思った。
 視聴者ではなく、ただ一人の、この人に――


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