君の事好きになっても良いですか?
「私は理央が好きだよ。」
琴音は、まっすぐ俺の方を
見てはっきり言った。
その言葉に、
俺の胸の奥がすっと随分、軽くなる。
「……俺も、」
「好き。」
「めちゃくちゃ大好き。」
オムライスは、
少し冷めていたけれど、
二人の間の空気は、どこまでも暖かった。
大丈夫だ。
ちゃんと、隣にいる。
俺は、そう思いながら、
もう一口、オムライスを口に運んだ。
店を出ると、
夜の空気はすっかり涼しくなっていた。
街灯に照らされた歩道を、
俺と琴音は肩を並べて歩く。
「お腹いっぱい?」
「うん。お腹いっぱいだよ。」
「美味しかった。」
琴音の声は、少しだけ眠そうで、
一日バイトを頑張った疲れが滲んでいる。
マンションのエントランスが見えてきた。
「理央。」
「ここまでで大丈夫だよ。」
「うん」
「わかった。」
自動ドアの前。
人通りは少なく、遠くで車の音だけが聞こえる。
「今日は、色々あったな。」
理央がぽつりと言う。
「うん。でも、」
「ちゃんと話せてよかった。」
琴音はそう言って、理央を見上げた。
少しだけ、沈黙。
理央は、迷うように視線を泳がせてから、
小さく息を吸う。
「……無事に帰ったら、」
「talkメッセージ送って。」
「分かった。」
その一言に、俺のの気持ちが詰まっていた。
「理央」
「ん?」
「今日はありがとう。来てくれて」
「当たり前だろ」
照れ隠しのようにそう言って、
俺は一歩だけ距離を縮める。
そっと琴音の頭に手を置いた後、
優しいキスをする。
「無理すんなよ。」
「うん。」
名残惜しそうに
俺は一歩下がった。
「おやすみ」
「おやすみ、理央。」
琴音がエントランスに入るのを見届けてから、
俺はようやく背を向けた。
*理央*
一人になった途端、
夜の音がはっきりと耳に入ってくる。
静かだな……。
さっきまで隣にいた琴音の温度が、
まだ腕に残っている気がした。
……好きだと
改めて、そう思う。
今日聞いた、後輩の話。
胸がざわついたのは事実だ。
でも……
隠さず話してくれたのは
凄く嬉しくて。
その事実が、
俺の中で大きかった。
そんな事を思い返しているうちに
白鷺駅の改札が見えてくる。
ホームに立ち、電車を待つ。
晃なら、突然彼女のバイト先の
後輩が彼女に好意があるのバレバレなのを
知った際はこういう時どうするんだろ。
ふと、琴音の幼なじみの顔が浮かぶ。
……いや考えるな。
電車が到着し乗り込む。
窓に映る自分の顔は、
少しだけ大人になった気がした。
独占欲、隠す気なかったな。
でも、抑える気もない。
誰かに想われる琴音が嫌なんじゃない。
それでも、
自分の隣にいるのが琴音であってほしい。
最寄り駅で降りると、
住宅街はひっそりとしている。
歩きながら、スマホが震えた。
「今日はありがとう。」
「家にもう着いてるから安心してね。」
理央は、自然と口元が緩んだ。
琴音からのメッセージ。
「お疲れ、ゆっくり休んでね。」
送信して、
ポケットにしまう。
家の前に着き、
ドアを開ける前に、
空を見上げた。
夜空は澄んでいて、
月が静かに光っている。
早く明日の朝、琴音に会いたいなぁ。
そう思いながら、理央は家に入った。
理央 side 終わり
第15話 新しい後輩
END