君の事好きになっても良いですか?
四時間目の終了を告げるチャイムが鳴る。
一斉に立ち上がる椅子の音と、
「昼行こー」
「購買ダッシュ!」
という声が教室中に広がった。
俺は、席に座ったまま動かなかった。
カバンからスマホを取り出し、時間を確認する。
まだ昼休みは始まったばかり。
行くなら、今しかない……だよな。
俺は立ち上がり、教室を出る。
しばらく歩き2年の教室があるフロア前
に来ていた。
廊下にはすでに2年生のフロアへ
向かう生徒の流れができていて、
階段を上る一段一段が、やけに長く感じる。
緊張してんのか、俺。
胸の奥が少しだけ早く脈が打っている。
──2年5組教室前
目的の教室の前で、足が止まる。
やっ……やばいこれは緊張してきた。
扉の向こうから、楽しそうな話し声が聞こえる。
女子の笑い声に混じって、
はっきりと聞き覚えのある声。
琴音……先輩だ。
声もやっぱり可愛いなぁ……。
胸が、ぎゅっと締まる。
一度、深呼吸。
俺、逃げないって決めたろ!
瑠斗は、軽く扉をノックしてから、顔を覗かせた。
「琴音先輩。」
俺が扉を開けて琴音先輩を呼ぶと、
教室に居た人達は一斉に俺と琴音先輩に
視線を向けた。
みんながソワソワと俺と先輩の話しを
しだす。
琴音先輩は名前を呼ぶと、
一瞬きょとんとしてから、目を見開く。
「矢口君!?」
えっ!矢口君!?どうして私の教室に?
バイトの事で分からないことあるのかな?
連絡先知らないからわざわざ来てくれたの
かもしれない。
「こんにちわ♪」
「今日どうしたの?」
琴音先輩の声は、
バイト先で聞くそのままの優しいトーンだった。
その隣には、
落ち着いた雰囲気のオシャレ男子……
この人1年の女子から人気が高い。
いつも琴音先輩の横にいる人。
もう1人は明るそうな可愛い系な女の子。
この人もいつも琴音先輩の横にいる人だ。
この人達のオーラーがすごい。
「えっと……」
俺が言葉を探していると、
琴音先輩がすぐにフォローしてくれる。
「えっと、この前2人に」
「話ししたでしょ?」
「矢口瑠斗君の事。」
「この子がバイト先の後輩なの。」
「初めまして。」
「矢口瑠斗です。」
「琴音先輩にはいつもお世話になってます。」
矢口君が礼儀正しく軽く頭を下げる。
すると千歌ちゃんは明るく自己紹介を
する。
「琴音ちゃんの親友の宮崎千歌です!」
宮崎先輩はにこっと笑ってくれた。
「どうもです。」
俺は再び頭を下げて
少し安心した、その直後だった。
「……1年?」
琴音先輩の横にいる男子が
低い声で聞いてくる。
「はい。」
「ふーん。」
冷めた目を俺に向けて
短い返事。
だが、その視線はまっすぐ俺を射抜いていた。
この人が、篠崎晃……先輩。
名前だけは、琴音先輩から聞いていた。
幼なじみだと言う。
「琴音先………」
俺が琴音先輩と話そうと
口を開いた時、篠崎晃先輩は
それを遮るように俺に話しかける。
「何しに来たの?」
空気が、一瞬で張りつめる。
「昼休みに、後輩が先輩に会いに来た」
「だけですけど。」
俺は、逃げずに答える。