君の事好きになっても良いですか?
理央……
後輩……
そして自分…
順番を待つことすら許されない場所に、
自分が立っていることを思い知らされる。
「晃?」
「ん、なんでもない。」
「それならいいんだけど。」
しばらくして、晃は立ち上がった。
「トイレ行ってくる。」
「はーい!」
晃が部屋を出ると、静けさが落ちる。
琴音はベッドに倒れ込み、くるりと転がった。
「はぁ……」
「ねっ……眠い……。」
安心する匂い。
見慣れた天井。
少しだけ、目を閉じるだけ――
そう思ったはずなのに、
次に目を開ける前に、
意識は眠りへ沈んでいた。
俺は自分の部屋の扉を開けた瞬間、
足が止まった。
ベッドの上で、
琴音が小さく丸まって眠っている。
規則正しい寝息。
無防備な横顔。
「はぁ……なんなのこれ。」
「……反則だろ。」
思わず小言でそう呟く。
好きだ。
今でも、
どうしようもなく。
奪う気なんてない。
壊すつもりもない。
でも――
この気持ちまで、
なかったことにはできない。
俺はそっと琴音に近づき、
指先で髪に触れる。
心臓がうるさい。
ほんの一瞬だけ。
眠る琴音の額に、
俺の身体無意識に勝手に動いていた。
触れるか触れないかほどの距離で、
唇を落とす。
「あっ……やばい……やってしまった。」
「琴音……ごめん。」
琴音は相変わらず、静かな寝息を
たてて気持ち良さそうに寝ている。
俺……何やってんだよ……。
誰にも知られず、
誰にも届かず、
それでも確かに存在した想い。
晃はすぐに離れ、
何事もなかったように背を向ける。
――この気持ちは、俺が持っていけばいい。
琴音が目を覚ます前に、
全部、胸の奥へしまい込んで。
琴音が眠ったまま動かない
ことを確認してから、そっとドアを閉めた。
廊下に出た瞬間、
肺に入る空気が急に冷たく感じられる。
――落ち着け。
何度目か分からない言葉を、
心の中で繰り返す。
俺は一旦洗面所へ移動する。
洗面所の鏡に映った自分は、
思った以上に疲れた顔をしていた。
目の奥が、ずっと熱い。
蛇口をひねり、水をすくって顔にかける。
それでも、胸の奥のざわつきは消えなかった。
……もう、限界近いな
琴音が笑うたび、
琴音が誰かの名前を口にするたび、
「当たり前」が少しずつ削れていく。
昔は、
隣にいるだけでよかった。
声を聞いて、
一緒に笑って、
それだけで満たされていた。
でも今は違う。