君の事好きになっても良いですか?

“彼氏がいる琴音”
“誰かの一番になった琴音”

それを理解しているはずなのに、
心がついてこない。

――奪いたいわけじゃない。
――壊したいわけでもない。

ただ……

「俺は、どこに行けばいいんだ……」

声に出した途端、
情けなさが胸を締め付けた。

部屋に戻る勇気が出ず、
しばらく廊下に座り込む。

壁に背を預け、
天井を見上げる。

琴音の寝顔が、
何度も脳裏に浮かぶ。

無防備で、
信頼しきった顔。

こんなの……ずるい

俺だけが、
こんなにも苦しい。

琴音は悪くない。
誰も悪くない。

それが分かっているからこそ、
行き場のない感情が膨れ上がる。

――このまま、そばにいたら。
――きっと、いつか壊れる。

自分が……
それか、関係が。

晃は立ち上がり、
ゆっくりと深呼吸をした。

「……距離、取らないとな。」

言葉にした瞬間、
胸の奥がひりつく。

離れたくない。
でも、近すぎる。

でもやっぱり距離を取るなんて出来ない。

その矛盾が、
晃を追い詰めていく。


部屋のドアの前に立ち、
取っ手に手をかけて、止まる。


――俺は、何を守りたい?

問いに答えは出ない。


ただ一つ確かなのは、
このままではいけないということだけ。


晃はゆっくりと手を離し、
もう一度、深く息を吸った。


……今日は、耐えろ。

それは決意というより、
必死な自制だった。

限界が、
すぐそこまで来ていることを
自覚しながら。
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