君の事好きになっても良いですか?

海風が少し強くなり、
レジャーシートの端がふわりと揺れる。
戻って来た私を含む7人を、
太陽の光を受けてキラキラ反射する
海が迎える。
空は晴天で夏空が広がっていて、
砂浜は、海水浴に来た人達の笑い声が
広がっていた。


「うわ~!どんどん暑くなってきたね!」
「早く海入ろー!」

夏奈ちゃんは背筋を伸ばしながら
言う。


「琴音ちゃん、日焼け止め塗った?」

千歌ちゃんが心配そうに気にかけてくれた。


「塗ったのは塗ったけど……」
「背中が届かなくて。」


「じゃ、俺が塗ってあげる。」


「ええええ!何それ!」
「理央君、めっちゃ積極的じゃん!」



「理央、ちゃんとムラなく塗ってあげてね。」
「日焼けの痕琴音ちゃんに残ってたら」
「私と千歌ちゃんが許さないよ?(笑)」


「はいはい(笑)」


「理央君……いっ……いいの?」


「うん……。」
「向こう向いてて。」
「ちゃんと塗ってあげるから。」


琴音ちゃんは頷き、タオルを外して
背中を見せた。

水着の細い紐が小さく揺れ、肩甲骨の
ラインが透ける。
俺は息を整えて、日焼け止めを手に取る。


ちっ……近い……琴音ちゃんの肌、白い。
触れたら緊張で手が震えそう……。
自分で塗ってあげると言いながら、
ちょっと難易度高くて困る。

俺は、琴音ちゃんから受け取った
日焼け止めを手のひらで温め、
指の腹で優しく、琴音ちゃんの背中に
伸ばす。


「っ……ひゃっ!」
「っつ……冷たい……。」


「ごっ……ごめん……」
「すぐ馴染むから少し我慢して。」


琴音ちゃんの肩が微かに、
くすぐったそうに揺れた。

可愛いすぎ……。
ヤバい……変に意識して、力入れたら
嫌だよな。
俺は引き続き、丁寧に塗っていく。



理央君の指は、まるで割れ物の表面を
撫でるみたいに慎重だった。

最初冷たかった理央君の手は、
今は温かい。

背中、触れられてるだけなのに……
私の心臓がすごい音してる。
平静を装えてるかな?
心臓の音気づかれてないよね?


肩にかかる指先が移動する度、
くすぐったさとドキドキが入り混じる。

なんでこんなに優しいの?
好きな気持ち……もうこんなの隠せないよ。


私は唇をきゅっと閉じ、ただ前向く事に
集中した。




「よし……終わった。」
「ちゃんと塗れたから、もう焼けないよ。」


琴音ちゃんは振り返り、頬を赤らめながら
微笑む。


「ありがとう、理央君。」


その”ありがとう”の声は、
風に溶けるように柔らかかった。


「どういたしまして。」




俺は少し離れた場所で、千歌と
その光景を見ていた。
苦笑いするしかなく、切なくて
琴音が遠く感じる。
そこは俺の場所なのにと、
嫉妬が渦を巻くのをグッと堪えた。

理央はやっぱり琴音の事本気なんだ。
今まで言い寄ってくる相手と
格別に違うのは感じていた。
だからこそ悔しくて手放したくない。


「アキ君大丈夫?」


「大丈夫に見える?」


「見えない……ごめん。」


「なんで千歌が謝るんだよ。」


「だって、私ねアキ君の気持ち」
「知ってるけど、琴音ちゃんの」
「気持ちを応援するのが最優先だから。」
「本当はアキ君の事好きになって欲しかった」
「のは本音。」


「千歌ありがとう。」
「だけど、まだ俺終わってないから。」
「まだ、何も琴音に気持ち言ってないし。」
「俺、仮に理央と琴音が付き合っても」
「好きなままでいると思う。」
「そんな簡単に諦められてたら」
「こんな苦労しない。」


「そうだよね。」
「アキ君、もし理央君が琴音ちゃんの事」
「悲しませたら……」


「そんなの奪い返すしかないだろ。」



海はすぐそこにあって、
波の音が理央と琴音の高ぶった鼓動を
隠すように寄せては返していた。
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