モブ姫に転生したら幽閉されていました  ~二ヶ月後に王家滅亡らしいので逃げるつもりでしたが、なぜか溺愛が始まりました~


ここは、広大な敷地を持つ、王城の北の端。石で作られた、かつては囚人や捕虜をとらえるために作られた塔だったらしい。

自給自足のためだったらしい庭があるが、そこは高い塀で囲われていて、外を見ることはできない。
これまで何度も脱走を試みたことがあるアリエスだが、一度も成功していないことは、ミラージュも知るところだ。

「大丈夫よ。早く、この石に魔力を込めちゃわないと。これが国のためになっているはずだもの」
 ミラージュは静かに“魔力石”を手に取り、そっと目を閉じる。
 “魔力供給役”として酷使される日々。
 粗悪な石に繊細な魔力を流し込み続ければ、身も心もすり減るのは当然だ。

 案の定──。

「お母様……また手が……」
 魔力を込めるミラージュの指先から、ぽたり、と赤い雫が落ちた。
「大丈夫よ、アリエス。痛くないわ。慣れてしまったもの」
 ミラージュはそう微笑むが、その笑みはあまりにも儚い。

 アリエスの胸がぎゅっと締めつけられた。
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