愛なき凸凹夫婦だったのに、生まじめ妻は御曹司の熱情愛に堕ちる
契約結婚の日常
1
机に向かっている友里と陽菜の前には、大量の本が積まれている。
今月蔵書になったばかりの新刊だ。それらの背表紙に分類のためのシールを張り、裏面にはバーコードを張り、上から透明で丈夫なフィルムを巻く。地味だが大事な仕事だ。
しかし今日の友里はいまいち集中できていない。
「ねえねえ」と隣にいる陽菜にしょっちゅうちょっかいをかけてくる。
「なに」
「もうすぐ一か月になると思うんだけど、新婚生活はどうですか」
「どうって」
付き合って一年になる彼氏と同棲を考えていると、陽菜は友里から聞いていた。
だから陽菜と俊哉の新婚生活を参考にしたいのかもしれないが、正直役に立てるとは思えない。
「普通……なのかな」
まず子供の頃に両親が離婚しているので、陽菜には普通の夫婦というものがよくわからない。
「家事の分担とか、どうしてるの? 半々?」
「ううん。彼は忙しいひとだから、なにも」
「え、全部陽菜に丸投げ? 共働きなのに?
それはちょっとひどくない? というように友里は器用に片眉を上げた。
「でも家事っていっても、私がまともにやってるのって料理くらいだよ」
料理もケータリングや総菜で構わないと言われているが、料理くらいしないと逆に落ち着かないし、俊哉は週の半分は接待などで夕食を外で摂るので、全然負担ではない。
「そうなんだ。掃除は?」
「掃除は週に二回ハウスクリーニングを頼んでるし、それ以外の日はロボット掃除機が勝手に床掃除してくれてるし」
「……洗濯は?」
「お洗濯は下着以外はまとめてクリーニングに出してる」
しかもマンションの一階にあるコンシェルジュカウンターに持ち込むだけだから、出しにいく手間もほぼない。
掃除と洗濯を外注にしたおかげで、家はいつもピカピカだし、俊哉と一緒にいられるときは家事に追われずふたりでゆっくりすごせる。
そんな生活に、ようやく慣れてきたところだ。
自分でやればタダなのにと思い、最初はどうしても贅沢に感じてしまった。ひとに掃除させておいて自分が座っているのが落ち着かなくてつい手伝ってしまい、業者さんを困らせたりもした。
それがいまでは時間や手間をお金で買うという価値観をだんだん受け入れられるようになり、ハウスクリーニングが入っている間も勉強に集中できるようになった。
「はーっ、家事を外注かあ」
その発想はなかったというように友里が天井を仰ぐ。
「合理的といえばそうなんだろうけど、けっこうな金額だよね。旦那さん、高給取りなんだねえ」
素直に羨ましがられ、照れくさくなる。
「お喋りはそろそろ終わり。残りやっちゃおう」
パンパンと手を叩いて、止まっていた作業を再開させる。
「はーい」
友里はまだ話を聞きたそうにしていたが、諦めたように手を動かしはじめた。
机に向かっている友里と陽菜の前には、大量の本が積まれている。
今月蔵書になったばかりの新刊だ。それらの背表紙に分類のためのシールを張り、裏面にはバーコードを張り、上から透明で丈夫なフィルムを巻く。地味だが大事な仕事だ。
しかし今日の友里はいまいち集中できていない。
「ねえねえ」と隣にいる陽菜にしょっちゅうちょっかいをかけてくる。
「なに」
「もうすぐ一か月になると思うんだけど、新婚生活はどうですか」
「どうって」
付き合って一年になる彼氏と同棲を考えていると、陽菜は友里から聞いていた。
だから陽菜と俊哉の新婚生活を参考にしたいのかもしれないが、正直役に立てるとは思えない。
「普通……なのかな」
まず子供の頃に両親が離婚しているので、陽菜には普通の夫婦というものがよくわからない。
「家事の分担とか、どうしてるの? 半々?」
「ううん。彼は忙しいひとだから、なにも」
「え、全部陽菜に丸投げ? 共働きなのに?
それはちょっとひどくない? というように友里は器用に片眉を上げた。
「でも家事っていっても、私がまともにやってるのって料理くらいだよ」
料理もケータリングや総菜で構わないと言われているが、料理くらいしないと逆に落ち着かないし、俊哉は週の半分は接待などで夕食を外で摂るので、全然負担ではない。
「そうなんだ。掃除は?」
「掃除は週に二回ハウスクリーニングを頼んでるし、それ以外の日はロボット掃除機が勝手に床掃除してくれてるし」
「……洗濯は?」
「お洗濯は下着以外はまとめてクリーニングに出してる」
しかもマンションの一階にあるコンシェルジュカウンターに持ち込むだけだから、出しにいく手間もほぼない。
掃除と洗濯を外注にしたおかげで、家はいつもピカピカだし、俊哉と一緒にいられるときは家事に追われずふたりでゆっくりすごせる。
そんな生活に、ようやく慣れてきたところだ。
自分でやればタダなのにと思い、最初はどうしても贅沢に感じてしまった。ひとに掃除させておいて自分が座っているのが落ち着かなくてつい手伝ってしまい、業者さんを困らせたりもした。
それがいまでは時間や手間をお金で買うという価値観をだんだん受け入れられるようになり、ハウスクリーニングが入っている間も勉強に集中できるようになった。
「はーっ、家事を外注かあ」
その発想はなかったというように友里が天井を仰ぐ。
「合理的といえばそうなんだろうけど、けっこうな金額だよね。旦那さん、高給取りなんだねえ」
素直に羨ましがられ、照れくさくなる。
「お喋りはそろそろ終わり。残りやっちゃおう」
パンパンと手を叩いて、止まっていた作業を再開させる。
「はーい」
友里はまだ話を聞きたそうにしていたが、諦めたように手を動かしはじめた。