愛なき凸凹夫婦だったのに、生まじめ妻は御曹司の熱情愛に堕ちる
       2

「行きたくない」
 休日の昼間。俊哉はソファに寝転がってクッションを抱き締め、ふてくされている。ちなみに陽菜の膝枕の上でだ。
 俊哉がこんなふうに子供っぽい姿を見せるのは極めて珍しい。
 なんでも夕方から仕事がらみでちょっとしたパーティーに顔を出さなくてはいけないのが嫌でしかたないらしい。
「せっかく陽菜と一緒の休みなのに、なんでしょうもないパーティーなんて行かなきゃいけないんだ」
「お仕事なんでしょう? しかたがないじゃないですか」
「陽菜は俺といたくないの」
 じとっとにらまれ、めんどくさいがかわいいひとだと思う。
「いたいですよ。でも涙を呑んでお留守番しています」
 なだめるように、ポンポンと肩の辺りを叩く。
「そこは行かないでっとか言ってほしい……あ、そうだ」
 いいことを考えついたという顔で、俊哉が身を起こした。
「一緒に行こう。パートナーを連れてくるひともいっぱいいるから」
「え、嫌ですよ」
 陽菜は即答した。
「なんで」
「着るものもないですし」
 北海道旅行の最終日に俊哉の友達と会い、自分があまり貧相な格好をしていては俊哉に迷惑をかけると痛感したので、いくつか服を新調してはいた。だが、さすがにパーティーに行くような服はないし、そもそもそのパーティーというものがどのくらいの規模なのかもわからず怖気づいてしまう。
「買ってから行けばいい。昼はどこかで外食して、そのあとデパートに行こう。うん、それがいい」
「ええ……」
 俊哉はさっきとは別人のようにうきうきしだしたが、陽菜は気がのらない。
「三十分くらい顔を出せば義理は立つから。ね、お願い」
 上目遣いで懇願され、陽菜は折れた。
「……わかりました」
「やった」
 パーティーなんて柄ではないが、あれだけふてくされていた俊哉が嬉しそうにしているのを見て、まあいいかと思った。
< 27 / 35 >

この作品をシェア

pagetop