妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています
 ルフェーヌは普段は城の中でも行かない場所へとディエゴと一緒にやってきた。
 普段の生活に利用している居住エリアから外れ、昔使用されていたエリアへやってきた。そこには蔵書室という部屋があった。
 蔵書室とは古代の国の歴史や古い魔法の文献や書物など年代物が保管されている部屋だ。
 ルフェーヌはディエゴと一緒に蔵書室へやってきた。辺りに人の気配は全くない。ディエゴによれば、ここにはめったに人は来ないという。
 蔵書室は普段は使われていないせいか埃っぽい。広さは食堂くらいあるだろうか。室内には窓からほどよく日差しが入っている。本棚は蔵書室の壁一面に隙間なく並んでいる。テーブルや椅子は古く、乱暴に扱うと壊れてしまいそうだ。
 ディエゴは蔵書室へ入ると迷いなく書物棚へ歩いて行き、目当ての書物を手に取る。背表紙が太く、かなり古そうな書物だ。書物の表紙には”魔法属性一覧”と書かれている。
 「ほら、これだ」
 ディエゴは目次で目的のページを探し、後ろからめくって目当ての属性を見つける。そのページには”音属性”と書かれている。
 「音属性、本当にあるのね!」
 ルフェーヌは嬉しそうに笑う。ルフェーヌは自分に音属性という属性があった事が嬉しくて瞳に涙が滲んでくる。
 ルフェーヌはディエゴに背を向けて、ポケットからハンカチを出してこっそり涙を拭く。
 「どうした?」
 ディエゴは嬉しそうにしていたのに、ルフェーヌに背を向けられたのが気になった。
 「わたしが音属性と知って嬉しいの。ディエゴ様は知っていたか分からないけど、わたしは魔法が使えない事を言われていてーー。だから、風属性ではなくても魔法が使えるのがすごく嬉しいの!」
 ディエゴはルフェーヌの頭を優しく撫でる。
 「お前が母国でどう言われていたかはどうでもいい。お前がほとんどのヤツが使えない魔法を使える才能があると、俺は知っていた」
 「わたしが音属性と、どうして気づいたの?」
 「俺が努力家だからだ。子供の頃に魔法について調べ事をしていた時にこの記述を見つけた」
 「ディエゴ様に感謝ね!」
 ルフェーヌは満面の笑顔をディエゴに向ける。ディエゴの表情が柔らかくなる。
 「これをよく読んで自己理解を深めろ」
 ディエゴは書物を開いたままルフェーヌへ手渡す。
 「ありがとう、ディエゴ様!」
 ルフェーヌは輝くような笑顔を見せるとディエゴは優しく目を細める。
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