妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています
 アデルは自国からの迎えの風力車に乗ってスフェーン国へ帰るとアデルの父王ジスランがが笑顔で出迎える。
 「アデル、帰って来るのを待ちわびていたぞ!」
 アデルは呆気にとられる。
 パイロープ国で罪を犯して幽閉されていた事。罰金11億の事。何と言って説明したらいいか、迎えの風力車の中でずっと考えていた。
 「体調は大丈夫か? パイロープ国で静養させてもらったんだ、ちゃんと礼を言ってきたんだろうね?」
 (静養ってなに?)
 アデルは状況が分からず、思考が止まる。
 「先に文書で送られてきたぞ。アデル、ルフェーヌのために十一億の結婚祝い金を出すだなんて、なんて姉思いなんだ!」
 「え?」
 ジスランは感激してアデルへ話すが、アデルの思考はさらに止まる。
 (結婚祝い金? 何を言っているの?)
 思考が止まり、アデルの頭が真っ白になるが、ジスランは気づかない。
 「確かに大金だが、パイロープ国との関係が深くなるぞ」
 ジスランは嬉しそうにアデルの肩を叩いて話を続ける。
 「それと、ルフェーヌの支援課慈善係の職員たちが感動して、ルフェーヌが手がけていた慈善活動をアデルへ引き継いでもらいたいと言っている」
 「なんで、あたくしが……」
 アデルは慈善活動が一番やりたくない公務だ。アデルは自身のイメージのため広報が入れば行っていたが、いつもルフェーヌへ押しつけていた。
 「アデルは美しく心優しい皆に愛される自慢の王女だ。引き継いでくれるだろう?」
 ジスランは笑顔でアデルへ言葉をかける。アデルはなぜこうなったのか分からず、何も考えられず頭が混乱している。
 アデルは自分でそのイメージを作ってきた。それがこんな形で仇となって返ってくるとは思わなかった。
 アデルは笑顔のジスランの横で立ち尽くす事しかできなかった。
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