部長と私の秘め事
「……綺麗で可愛い継妹と、もっと仲よくなりたかっただけなのかもしれません。沢山話して、恋人みたいにデートして、悩みも聞き、『お兄ちゃん』と甘えられて、周りから羨望の目で見られたかった。朱里の〝いい兄〟になりたかったんです。……そんな〝夢〟を見てしまったのかな。継妹と親密になったら、自分の代わり映えのない生活に〝何か〟が起こって、もっといい人生になる……って」
もしも尊さんがいない時にこの話を聞いたら、『気持ち悪い!』と言っていたかもしれない。
でも今は尊さんがいるし、彼のお陰で私も亮平の本心を知る事ができた。
(……そうか、亮平は私を女として見ていたんじゃなくて、頼れる〝兄〟になりたかったんだ。いい子でいなきゃならなかった分、実妹じゃない私にチヤホヤされたかったのかな)
ブラコンの美奈歩には悪いけれど、亮平が血の繋がった妹に新鮮さを感じないのは、ある意味分かる。
血の繋がっていない継妹って言ったら漫画でもよくあるシチュエーションだし、ちょっと禁断の雰囲気があってドキドキするんだろう。
そんな妹に「お兄ちゃん」と慕われたい、頼りにされたいという想いなら、ある程度理解できる。
けど、納得はしても、亮平の気持ちに応えるのは無理だ。
尊さんはさらに優しく攻めた。
「先ほどの電話の件もですが、相手に反感を抱かせるやり方は良くありません。『妹だから言う事を聞かせて当然』と思ったなら大間違いです。人はまず家族に優しく接し、それから外部の人にも丁寧に接するものです。『妹ならこれぐらい大丈夫だろう』と思ってスマホを取り上げたあなたの行為は、相手が恋人ならモラハラと言われてもおかしくない行動です」
そう言われ、亮平はぐっと言葉に詰まった。
「可愛くて美人な妹に言う事を聞かせたい欲は、男としてある程度理解します。でも彼女はあなたの所有物ではありません。一人の意思を持つ人間です。急に車で予定外の場所に連れて行かれれば怯えますし、車という密室でスマホを取り上げられたら恐怖を抱いて当然です」
「……悪かった。朱里」
尊さんに諭され、亮平は私に謝ってくる。
「……『いいよ』とは言わない。何をされるか分からなくて本当に怖かった。一応兄だから大丈夫だろうとは思っても、普段の行動が信頼できなかったから、余計に不安だった。二度としないで」
尊さんのお陰で亮平の気持ちが分かったし、もっと優しい言い方をすれば良かったのかもしれない。
でも拉致されてスマホを奪われた件について、なあなあにしたら駄目だと思ったから厳しめな返事をした。
尊さんの言う通り、これを家庭外の女性にしたら本当にモラハラだ。いけない事をしたと分からせないとならない。
「分かった。誓う」
亮平が頷いたあと、尊さんが尋ねた。
「参考までに聞いておきたいんですが、スマホを取り上げたのはどういう意図で?」
すると亮平はボソッと答えた。
「……運転中に急に彼氏から電話くるもんだから、びっくりしちゃって……」
天然かああああ!!
私は心の中で突っ込み、疲れを覚えてガクッと項垂れた。
その時、ようやく私たちは席についた。
「はぁ……、なんかお腹空いた。沢山たーべよ!」
メニューを捲る私を見て、尊さんはクスクス笑う。
「家でもよく食べる健康優良児でしたか?」
「ちょっと尊さん、そういう言い方……」
「ああ、よく食ってましたね。〝身〟にならないのが不思議なくらい」
「亮平も」
あれ……、なんか結託してる……。
ちょっと前まで一触即発で喧嘩しないかヒヤヒヤしていたのに、なんだこの感じは。
私の隣に座った尊さんは、メニューを見ながら言った。
「亮平さんってあんまり感情の起伏がないですよね。驚いても無反応なタイプでしょう」
尊さんに言われ、亮平は「よく分かりますね」と感心したように頷いている。
「それで〝心の声〟が多いものだから、自分では納得して行動しているんですが、周囲からは『行動が突然』と言われませんか?」
「まさにそれです。……凄いですね、速水さん」
彼は驚いたように瞠目して言う。
「多分それも、〝いい兄〟でいようとした反動だと思いますよ。今は誰にも遠慮する必要がありませんし、思った事はちゃんと口に出して伝える事をお勧めします。そのほうが誤解が少なくなりますしね。付き合っていた方に、悩み事を打ち明けられていましたか? 何も相談されず『自分を見ていない』と思ったから、お相手は離れたのでは……と感じます」
あ そう言われて、亮平は気まずそうに頷く。
もしも尊さんがいない時にこの話を聞いたら、『気持ち悪い!』と言っていたかもしれない。
でも今は尊さんがいるし、彼のお陰で私も亮平の本心を知る事ができた。
(……そうか、亮平は私を女として見ていたんじゃなくて、頼れる〝兄〟になりたかったんだ。いい子でいなきゃならなかった分、実妹じゃない私にチヤホヤされたかったのかな)
ブラコンの美奈歩には悪いけれど、亮平が血の繋がった妹に新鮮さを感じないのは、ある意味分かる。
血の繋がっていない継妹って言ったら漫画でもよくあるシチュエーションだし、ちょっと禁断の雰囲気があってドキドキするんだろう。
そんな妹に「お兄ちゃん」と慕われたい、頼りにされたいという想いなら、ある程度理解できる。
けど、納得はしても、亮平の気持ちに応えるのは無理だ。
尊さんはさらに優しく攻めた。
「先ほどの電話の件もですが、相手に反感を抱かせるやり方は良くありません。『妹だから言う事を聞かせて当然』と思ったなら大間違いです。人はまず家族に優しく接し、それから外部の人にも丁寧に接するものです。『妹ならこれぐらい大丈夫だろう』と思ってスマホを取り上げたあなたの行為は、相手が恋人ならモラハラと言われてもおかしくない行動です」
そう言われ、亮平はぐっと言葉に詰まった。
「可愛くて美人な妹に言う事を聞かせたい欲は、男としてある程度理解します。でも彼女はあなたの所有物ではありません。一人の意思を持つ人間です。急に車で予定外の場所に連れて行かれれば怯えますし、車という密室でスマホを取り上げられたら恐怖を抱いて当然です」
「……悪かった。朱里」
尊さんに諭され、亮平は私に謝ってくる。
「……『いいよ』とは言わない。何をされるか分からなくて本当に怖かった。一応兄だから大丈夫だろうとは思っても、普段の行動が信頼できなかったから、余計に不安だった。二度としないで」
尊さんのお陰で亮平の気持ちが分かったし、もっと優しい言い方をすれば良かったのかもしれない。
でも拉致されてスマホを奪われた件について、なあなあにしたら駄目だと思ったから厳しめな返事をした。
尊さんの言う通り、これを家庭外の女性にしたら本当にモラハラだ。いけない事をしたと分からせないとならない。
「分かった。誓う」
亮平が頷いたあと、尊さんが尋ねた。
「参考までに聞いておきたいんですが、スマホを取り上げたのはどういう意図で?」
すると亮平はボソッと答えた。
「……運転中に急に彼氏から電話くるもんだから、びっくりしちゃって……」
天然かああああ!!
私は心の中で突っ込み、疲れを覚えてガクッと項垂れた。
その時、ようやく私たちは席についた。
「はぁ……、なんかお腹空いた。沢山たーべよ!」
メニューを捲る私を見て、尊さんはクスクス笑う。
「家でもよく食べる健康優良児でしたか?」
「ちょっと尊さん、そういう言い方……」
「ああ、よく食ってましたね。〝身〟にならないのが不思議なくらい」
「亮平も」
あれ……、なんか結託してる……。
ちょっと前まで一触即発で喧嘩しないかヒヤヒヤしていたのに、なんだこの感じは。
私の隣に座った尊さんは、メニューを見ながら言った。
「亮平さんってあんまり感情の起伏がないですよね。驚いても無反応なタイプでしょう」
尊さんに言われ、亮平は「よく分かりますね」と感心したように頷いている。
「それで〝心の声〟が多いものだから、自分では納得して行動しているんですが、周囲からは『行動が突然』と言われませんか?」
「まさにそれです。……凄いですね、速水さん」
彼は驚いたように瞠目して言う。
「多分それも、〝いい兄〟でいようとした反動だと思いますよ。今は誰にも遠慮する必要がありませんし、思った事はちゃんと口に出して伝える事をお勧めします。そのほうが誤解が少なくなりますしね。付き合っていた方に、悩み事を打ち明けられていましたか? 何も相談されず『自分を見ていない』と思ったから、お相手は離れたのでは……と感じます」
あ そう言われて、亮平は気まずそうに頷く。