部長と私の秘め事
「……確かに心配させたら悪いし、しかも継妹を気にしていると言ったら不快に思われるだろうと思って、彼女には何も伝えませんでした」
沈黙って思っている以上に罪だな……。
「よりを戻したいと思うなら、考えていた事をすべて打ち明けるのをオススメしますよ。その上で『改善するからまた付き合ってほしい』とお願いするのがいいように思えます」
「……そうします」
しかし尊さんの人を分析する能力、凄いなぁ!
加えて亮平が元サヤに戻るサポートまでするんだから、義弟満足度ナンバーワンだ。
納得した私は頷いてから言う。
「はぁ……、〝亮平仕草〟の正体はそれか……。とりあえず刀削麺とノーマル小龍包」
「流れるようにメニューを決めるな」
尊さんは私に突っ込んで笑ってから、「俺はどうしようかな」と顔を寄せてくる。
今日も彼は当社比百二十パーセント顔がいいし、いい匂いがする。
努めて普通の顔をしていたつもりだけど、ニヤついていたんだろうか。
「……朱里って恋人の前だとそんな顔をするんだな」
亮平に言われ、私はとっさに両手で口元を覆う。
「なっ、……なんだよう……」
恥ずかしさのあまり、私はあまり賢くない返しをしてしまう。
亮平はそんな私を見ていたけれど、クシャッと笑った。
「や、俺じゃそんな顔をさせられないなって思ってたトコ。……いいんじゃないか? 速水さん。朱里が惚れるの分かったわ」
「……あ……、それは……、ありがとう。いつか家族に合わせる時、その調子で応援してほしい」
現金にも亮平の応援を欲しがった私の言葉に、二人はクスクス笑う。
「ありがとうございます、亮平さん。これから宜しくお願いします」
「こちらこそ、速水さん。一人で考え込む癖があるので、良かったらまた今度話を聞いてください」
「勿論です。今日は色々と何ですから、また改めて食事でもしましょうか」
気がつけば私たちは和やかな雰囲気で食べたい物をオーダーし、美味しい中華をたらふく食べ、色んな事を話した。
尊さんは篠宮家の話を今するつもりはないようで、会社の事や私との馴れそめなどを聞かれるままに話していた。
……まぁ、馴れそめって言ってもそのままを話すと問題があるので、普通に「上司と部下として惹かれ合い、何回か食事をし、デートするうちに……」と言っているけれど。
私たちはお店を出たあとに中華街をブラブラし、夕方前に現地解散した。
今日はちょっとタイミングが悪かったので、家族への結婚報告は後日改めてとなった。
「今日は悪かったな」
「んーん、いいよ。……分かり合えるまで長かったけど」
駐車場で私は亮平と別れを告げ、尊さんの車に乗る。
「はぁ……」
助手席に乗って溜め息をつくと、尊さんは「お疲れ」と私の頭を撫でてからエンジンを掛けた。
「あぁー……、一日疲れた。でも尊さんのドライブで帰れるなら最高」
「今度、車でもうちょっと遠い所に泊まりで出かけるか」
「はい!」
提案され、私は満面の笑みで頷く。
「どこがいい? 暖かくなったら花のある所とか、温泉とか、ランド的なものでもいいし」
「尊さん、絶叫系乗れます?」
「平気」
「わああ……、尊敬する……。お化け屋敷は?」
「友達から『リアクションが薄い』って文句を言われたな」
「あぁ……、なんか目に浮かびます」
たわいのない話がとても幸せで、私はクスクス笑う。
「今度、嫌じゃなかったら尊さんの友達に紹介してほしいです」
「いいよ。どこか小洒落たイタリアンバルででも話すか」
「やったー!」
「今の『やったー』は、紹介よりイタリアンバルだろ」
「そっ、そんな事ない!」
焦った私の返事を聞き、尊さんは肩を揺らして笑う。
そのあと、何となく沈黙になってしまったけれど、尊さんとならまったく気まずくない。
沈黙が重たくならない人って、地味に貴重だ。
「……朱里」
「はい?」
やがて尊さんが口を開き、私は穏やかな気持ちで返事をする。
「怖い思いをさせたな。側にいてやれなくて悪かった」
改めて亮平の事を言われ、私は苦笑いする。
沈黙って思っている以上に罪だな……。
「よりを戻したいと思うなら、考えていた事をすべて打ち明けるのをオススメしますよ。その上で『改善するからまた付き合ってほしい』とお願いするのがいいように思えます」
「……そうします」
しかし尊さんの人を分析する能力、凄いなぁ!
加えて亮平が元サヤに戻るサポートまでするんだから、義弟満足度ナンバーワンだ。
納得した私は頷いてから言う。
「はぁ……、〝亮平仕草〟の正体はそれか……。とりあえず刀削麺とノーマル小龍包」
「流れるようにメニューを決めるな」
尊さんは私に突っ込んで笑ってから、「俺はどうしようかな」と顔を寄せてくる。
今日も彼は当社比百二十パーセント顔がいいし、いい匂いがする。
努めて普通の顔をしていたつもりだけど、ニヤついていたんだろうか。
「……朱里って恋人の前だとそんな顔をするんだな」
亮平に言われ、私はとっさに両手で口元を覆う。
「なっ、……なんだよう……」
恥ずかしさのあまり、私はあまり賢くない返しをしてしまう。
亮平はそんな私を見ていたけれど、クシャッと笑った。
「や、俺じゃそんな顔をさせられないなって思ってたトコ。……いいんじゃないか? 速水さん。朱里が惚れるの分かったわ」
「……あ……、それは……、ありがとう。いつか家族に合わせる時、その調子で応援してほしい」
現金にも亮平の応援を欲しがった私の言葉に、二人はクスクス笑う。
「ありがとうございます、亮平さん。これから宜しくお願いします」
「こちらこそ、速水さん。一人で考え込む癖があるので、良かったらまた今度話を聞いてください」
「勿論です。今日は色々と何ですから、また改めて食事でもしましょうか」
気がつけば私たちは和やかな雰囲気で食べたい物をオーダーし、美味しい中華をたらふく食べ、色んな事を話した。
尊さんは篠宮家の話を今するつもりはないようで、会社の事や私との馴れそめなどを聞かれるままに話していた。
……まぁ、馴れそめって言ってもそのままを話すと問題があるので、普通に「上司と部下として惹かれ合い、何回か食事をし、デートするうちに……」と言っているけれど。
私たちはお店を出たあとに中華街をブラブラし、夕方前に現地解散した。
今日はちょっとタイミングが悪かったので、家族への結婚報告は後日改めてとなった。
「今日は悪かったな」
「んーん、いいよ。……分かり合えるまで長かったけど」
駐車場で私は亮平と別れを告げ、尊さんの車に乗る。
「はぁ……」
助手席に乗って溜め息をつくと、尊さんは「お疲れ」と私の頭を撫でてからエンジンを掛けた。
「あぁー……、一日疲れた。でも尊さんのドライブで帰れるなら最高」
「今度、車でもうちょっと遠い所に泊まりで出かけるか」
「はい!」
提案され、私は満面の笑みで頷く。
「どこがいい? 暖かくなったら花のある所とか、温泉とか、ランド的なものでもいいし」
「尊さん、絶叫系乗れます?」
「平気」
「わああ……、尊敬する……。お化け屋敷は?」
「友達から『リアクションが薄い』って文句を言われたな」
「あぁ……、なんか目に浮かびます」
たわいのない話がとても幸せで、私はクスクス笑う。
「今度、嫌じゃなかったら尊さんの友達に紹介してほしいです」
「いいよ。どこか小洒落たイタリアンバルででも話すか」
「やったー!」
「今の『やったー』は、紹介よりイタリアンバルだろ」
「そっ、そんな事ない!」
焦った私の返事を聞き、尊さんは肩を揺らして笑う。
そのあと、何となく沈黙になってしまったけれど、尊さんとならまったく気まずくない。
沈黙が重たくならない人って、地味に貴重だ。
「……朱里」
「はい?」
やがて尊さんが口を開き、私は穏やかな気持ちで返事をする。
「怖い思いをさせたな。側にいてやれなくて悪かった」
改めて亮平の事を言われ、私は苦笑いする。