部長と私の秘め事
「前は二階をオープンにして客寄せバニーを見せてたそうだけど、それに目を奪われて事故多発地帯になったから、一階になったそうだ」

「確かに、こんなん見せられたら、釘付けになっちゃう」

 私はケタケタ笑い、バニーちゃんたちのお尻や脚をガン見する。

 周囲には他にもこの光景を見に来ている人がいて、男性だけじゃなくマダムたちも「可愛い~。素敵」と言って写真を撮っていた。

 尊さんは私の肩を抱き、ボソッと囁いてくる。

「今度、猫からうさぎに乗り換えてみないか? 自宅でプライベートバーを開いて接待してほしい」

「…………えっち」

「だから俺はドスケベだって」

「……『ラ・メゾン・デュ・ショコラ』の一番大きい箱」

「よしきた」

 私たちはバニーちゃんのお尻を見ながら取引をし、固い握手を交わす。

「ところで、札幌といえば締めパフェが有名だけど……、行くか?」

「行く!」

 そのあと、私たちはバニーちゃんのお店から十分ほど歩いたところにある、『ななかま堂』に入った。夜パフェの名前通り、夜からしか営業していないらしい。

 芸術的な映えパフェを写真にとって「うまいうまい」と食べている傍ら、尊さんは山崎十二年を飲んでいた。

 たっぷり観光して食い倒れしたあと、私たちはタクシーに乗って札幌駅のホテルまで戻った。

「ぷあー……」

 コートを脱いでベッドに倒れ込むと、尊さんが靴を脱がしてくれる。

「お疲れさん。あとでちゃんと顔洗って、歯磨けよ」

「ん……。お父さんみたい」

「誰がお父さんだ」

 尊さんは私のほっぺを摘まみ、にゅー、と引っ張る。

「お父さん……、パンをこねないで」

 冗談を言うと、彼は両方のほっぺをムニュムニュとこねる。

「たっぷり発酵して、よーく膨らむんだぞ」

 尊さんはそう言ったあと、「がぶっ」と言って私のほっぺに噛み付いてきた。

「がぶがぶっ」

「んふふっ、中身は餡子たっぷり……?」

 笑いながら某パンマンネタを出すと、尊さんはふと顔を上げて腕を組んだ。

「あれ、全部食われた時、よく前向いて飛べるよな」

「あー、確かに」

 納得した私はクスクス笑う。

「んー、よいしょ。このままだとお尻に根っこが生えちゃうから、とっととやっちゃおう」

 お腹いっぱいでちょっと酔ってて本当はこのまま寝ていたいけど、明日も行動しないといけないから早めに寝ないと。

「尊さん、先にお風呂入ります?」

「あとでもいいよ。寒かったろ、先にあったまってくれ。俺は旅行のお楽しみ、地方局の番組を見てるから」

「あはは! それ!」

 時々、恵と一緒に国内旅行に行ってるけど、その土地ならではの情報番組があったり、天気予報にしてもいつもと見てる地図が違うので新鮮だ。

「じゃあ、先にいただきますね。お湯貯めておくので」

「ん、サンキュ」

 私はスーツケースから着替えを出し、洗顔料なども出してバスルームに向かう。

 一泊なのに尊さんは最上階のスイートをとってくれ、三十四階にある部屋はとても眺望がいい。

(本当はロマンチックに夜景を見下ろしながらエッチ……、とかしたいけど、さすがに忙しいもんなぁ)

 イチャつきたいけど、私にも体力の限界ってもんがあるので、してしまったら明日元気に動けなくなる。

 普通のホテルならシャワーカーテンを引いて、バスタブの中で体を洗って……となるけど、さすがスイートで、独立したシャワーブースがあるので、そこで髪と体を洗ってからゆったり湯船に浸かれる。

 お手洗いもガラスドアで区切られていて、洗面所も広く使えるので快適だ。

(……とはいえ、もう同棲してるけど、お手洗い一緒って何気に恥ずかしいな)

 色々気をつけてはいるけど、同棲したら今まで見せなかった部分も目にする事になるので、何かがきっかけで嫌われたらどうしようと不安になってしまう。

 私はバスタブにお湯を貯めながら、全裸になってまずメイクを落とす。

(でも尊さん、『朱里には俺が吐いてる姿を見られたしな』って遠い目になってたっけ。私は好きな人のなら全然構わないし、必要があれば処理できるし、尊さんもそうならいいな)

 悶々と考えながらメイクを落としていたけど、せっかく楽しい旅行に来てるんだから、悩むのはやめようと思った。

(悩むのはいつでもできるもんね。今は楽しまないと)

 お湯の貯まり具合を見たあと、私はシャワーブースに入り、体と髪を洗うと、まだ少なめだけどお湯に浸かり、溜め息をつく。
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