部長と私の秘め事
信じられないぐらい達かされて、意識はボーッとしてもう動けない。
気持ちよくて、お腹いっぱいでお酒も飲んで、幸せで、幸せで、幸せで。
「死んでもいいかも……」
ポソッと呟いた時、彼が覆い被さって抱き締めてきた。
「…………その時は俺も死ぬよ」
甘い声で囁かれ、私はふにゃりと笑う。
「……だーめ。……尊さんは私が幸せにするんです。……たくさん笑わせて、尊さんの子供……、産んで……、…………お腹いっぱい……に」
そこまで言い、私は力尽きてスヤァ……、と眠ってしまった。
「……最後まで言えよ。こんな時まで腹一杯かよ」
俺はすこやかに眠る朱里を見てクスクス笑い、彼女の髪を撫でつけると、汗ばんだ額にキスをした。
(強行軍であちこち回ったから、疲れてもしゃーねぇか)
彼女との初めての旅行が嬉しくて、俺も柄になく張り切っちまった。
(たらふく食わせて観光して、温泉にセックス……っていったら、そりゃ疲れるわな。……で、帰ったら仕事だよ)
俺はチラッと職場への土産について考え、溜め息をつく。
「……夢みてぇな日々だったな」
ベッドから下りた俺は、いつものように洗面所でタオルをお湯で濡らし、固く絞る。
そして朱里の体を拭き、汗を掻いた自分の体も拭いてから下着を穿いた。
そのあと朱里を抱き上げてもう一つのベッドに移り、照明を落とす。
(そーいや、旅行に出てから、一回も怜香の事を思いだして鬱屈とした気持ちにならなかったな)
一月六日にあいつに引導を渡してから、時々弁護士から報告を受け取っていた。
会社で働き、弁護士からの報告にも事務的に答え、あとは朱里と楽しく過ごそうと努め続け、今までの損なわれ続けた人生に比べたら、幸せすぎて嘘みたいな日々を送っている。
「…………本当に、今なら死んでもいいのかもな」
呟いたあと、俺は頬笑んで朱里の額にキスをする。
「……でも、まだだ」
呟き、母と妹の顔を思い浮かべる。
(二人の分まで幸せになって、理想の家庭を築いて、大往生するまでは、まだ)
それから、これからすべき事を思いだして苦笑いした。
祖父さんも、ちえり叔母さんも、朱里に会いたがっている。
兄貴とエミリが結婚するまで後押ししないといけないし、涼も会いたがってる。
「……幸せになるって、忙しいな」
四月からは副社長になって、あくせく働かなければならない。
色々厳しい事も起こるだろうし、ずっと平坦な道を歩ける訳じゃない。でも――。
「……頑張ってこうな。お前がいるなら頑張れる」
俺は腕の中でスヤスヤ眠るお姫様に囁き、目を閉じた。
**
あれだけ疲れて眠ったのに、興奮しているからか、翌朝は早めに起きてしまった。
尊さんは眠っていたのでこっそり寝顔を写真に撮り、私は静かに部屋を出て朝のラウンジに向かった。
(おっ、昨日と置いてる物が違う)
割と早朝に起きてるというのに、セルフサービスの所にはすでにミニサイズの焼きたてパンが置かれてあった。
(あとで朝食あるけど……。これだけ小さいなら一個だけ)
そう思い、私はミニクロワッサンをお皿にとり、席に座ってモグモグ食べる。
(朝風呂にも入りたいな。夜とはまた違った趣があるだろうし)
食べ終わったあと、ラウンジの雰囲気も堪能したし、部屋に戻る事にした。
ラウンジを出ると、品のいいお婆さんがこちらに向かって歩いてくるのを見た。
――と。
「危ないっ!」
すれ違う寸前にお婆さんがバランスを崩し、私はとっさに彼女を抱き留めた。
「大丈夫ですか?」
尋ねると、お婆さんは立ち直して弱々しく笑う。
「ごめんなさい。ありがとう。駄目ね、歳をとってくると目眩を起こしてしまったり、脚が弱くなったりで」
「いえいえ。朝食、きっと美味しいでしょうから、モリモリ食べて栄養をつけてください」
そう言うと、お婆さんはおかしそうに笑った。
「確かに、ここの朝食は美味しいわよ。私、連泊してるの」
「お墨付きで良かったです。私は今日チェックアウトなんですが、どうか奥さんも良い旅を」
微笑んで会釈すると、彼女も小さく頭を下げ、再びラウンジに向かった。
気持ちよくて、お腹いっぱいでお酒も飲んで、幸せで、幸せで、幸せで。
「死んでもいいかも……」
ポソッと呟いた時、彼が覆い被さって抱き締めてきた。
「…………その時は俺も死ぬよ」
甘い声で囁かれ、私はふにゃりと笑う。
「……だーめ。……尊さんは私が幸せにするんです。……たくさん笑わせて、尊さんの子供……、産んで……、…………お腹いっぱい……に」
そこまで言い、私は力尽きてスヤァ……、と眠ってしまった。
「……最後まで言えよ。こんな時まで腹一杯かよ」
俺はすこやかに眠る朱里を見てクスクス笑い、彼女の髪を撫でつけると、汗ばんだ額にキスをした。
(強行軍であちこち回ったから、疲れてもしゃーねぇか)
彼女との初めての旅行が嬉しくて、俺も柄になく張り切っちまった。
(たらふく食わせて観光して、温泉にセックス……っていったら、そりゃ疲れるわな。……で、帰ったら仕事だよ)
俺はチラッと職場への土産について考え、溜め息をつく。
「……夢みてぇな日々だったな」
ベッドから下りた俺は、いつものように洗面所でタオルをお湯で濡らし、固く絞る。
そして朱里の体を拭き、汗を掻いた自分の体も拭いてから下着を穿いた。
そのあと朱里を抱き上げてもう一つのベッドに移り、照明を落とす。
(そーいや、旅行に出てから、一回も怜香の事を思いだして鬱屈とした気持ちにならなかったな)
一月六日にあいつに引導を渡してから、時々弁護士から報告を受け取っていた。
会社で働き、弁護士からの報告にも事務的に答え、あとは朱里と楽しく過ごそうと努め続け、今までの損なわれ続けた人生に比べたら、幸せすぎて嘘みたいな日々を送っている。
「…………本当に、今なら死んでもいいのかもな」
呟いたあと、俺は頬笑んで朱里の額にキスをする。
「……でも、まだだ」
呟き、母と妹の顔を思い浮かべる。
(二人の分まで幸せになって、理想の家庭を築いて、大往生するまでは、まだ)
それから、これからすべき事を思いだして苦笑いした。
祖父さんも、ちえり叔母さんも、朱里に会いたがっている。
兄貴とエミリが結婚するまで後押ししないといけないし、涼も会いたがってる。
「……幸せになるって、忙しいな」
四月からは副社長になって、あくせく働かなければならない。
色々厳しい事も起こるだろうし、ずっと平坦な道を歩ける訳じゃない。でも――。
「……頑張ってこうな。お前がいるなら頑張れる」
俺は腕の中でスヤスヤ眠るお姫様に囁き、目を閉じた。
**
あれだけ疲れて眠ったのに、興奮しているからか、翌朝は早めに起きてしまった。
尊さんは眠っていたのでこっそり寝顔を写真に撮り、私は静かに部屋を出て朝のラウンジに向かった。
(おっ、昨日と置いてる物が違う)
割と早朝に起きてるというのに、セルフサービスの所にはすでにミニサイズの焼きたてパンが置かれてあった。
(あとで朝食あるけど……。これだけ小さいなら一個だけ)
そう思い、私はミニクロワッサンをお皿にとり、席に座ってモグモグ食べる。
(朝風呂にも入りたいな。夜とはまた違った趣があるだろうし)
食べ終わったあと、ラウンジの雰囲気も堪能したし、部屋に戻る事にした。
ラウンジを出ると、品のいいお婆さんがこちらに向かって歩いてくるのを見た。
――と。
「危ないっ!」
すれ違う寸前にお婆さんがバランスを崩し、私はとっさに彼女を抱き留めた。
「大丈夫ですか?」
尋ねると、お婆さんは立ち直して弱々しく笑う。
「ごめんなさい。ありがとう。駄目ね、歳をとってくると目眩を起こしてしまったり、脚が弱くなったりで」
「いえいえ。朝食、きっと美味しいでしょうから、モリモリ食べて栄養をつけてください」
そう言うと、お婆さんはおかしそうに笑った。
「確かに、ここの朝食は美味しいわよ。私、連泊してるの」
「お墨付きで良かったです。私は今日チェックアウトなんですが、どうか奥さんも良い旅を」
微笑んで会釈すると、彼女も小さく頭を下げ、再びラウンジに向かった。