部長と私の秘め事

女子会

「えー? やだ、嬉しい! いいの? 何もしてないのにお土産もらっちゃった」

「ありがとう! 朱里さん。風磨さんと一緒にいただくわ」

 二人とも喜んでくれて、私は中身を軽く説明しておく。すると、二人ともめちゃくちゃ感心した顔で頷いた。

「その土地の美味しいパティスリーのお菓子は、なかなか買えないからマジで嬉しい。本当に気が利くわね」

 春日さんに言われ、私は照れ笑いする。

「あ、いえ。これは尊さんの案なので……。彼にお礼を言ってください。私はただのお渡し役です」

「そうなの? 意外と細やかなのね」

 彼女が心底意外……という顔をするので、私は思わず笑ってしまう。

 同時に、春日さんの尊さんへの態度に、特筆すべきものがなくて少し安心した。

 一応は〝婚約者〟と言われていた仲だし、春日さんはとても素敵な人だから、「もしも未練があったら……」と思うと恐かったからだ。

 こうやって女子会に誘ってくれるぐらい、いい人なのに、いまだにこんな事を思ってしまっているのは失礼甚だしいので、勿論本人には言えないけれど。

 今さらだけど、年齢は私が二十六歳、春日さんが二十七歳、エミリさんが二十八歳で、三姉妹みたいだ。

 私は恵や職場の人以外、近い年齢の人とあまり接していないので嬉しくてドキドキしていた。

 そのあと、二月といえば苺とチョコレートのアフターヌーンティーが運ばれてきた。

 一段目には焼きたてスコーンが三種類、二段目にはローストビーフやスモークサーモンのサンドウィッチ、小さなミニグラタンのパイ、ガラスの器に入った苺と赤ワインのジュレが入ったミニパフェ。

 三段目には苺のブラマンジェに苺とその他フルーツのゼリー寄せ、ピンクが可愛い苺のマカロンに、一口サイズの苺のショートケーキ、フランボワーズのケーキ。

 女子の夢の憧れと言ってしまってもいいような、可愛いティースタンドを前に、目がハートになってしまう。

「かんわいぃ~」

「映えね、映え」

「ちょっと、写真撮りましょ」

 撮影タイムになって私とエミリさんがスマホを出したところ、おもむろに春日さんが一眼レフを出したので笑ってしまった。

「凄い! 本格的!」

「SNSで見栄を張るなら、写真にも気合い入れないと~」

 彼女は言いながら、中腰になって高層階からの眺めを背景にし、ティースタンドを激写した。

 撮影タイムが終わったあと、ホテルご自慢のブレンドティーをいただきながら、いざアフターヌーンティーが始まった。

「でも意外。春日さん、SNSとかこだわるタイプなんですね」

 苺味のスコーンを食べながら言うと、彼女は首をすくめる。

「私、友達いないから、そういうところで見栄を張るしかないの」

「ええ? 嘘~。春日さんなら絶対に人気者じゃない」

 エミリさんが言い、私も「んだ」と頷く。

 てっきり笑いをとるための冗談かと思っていたんだけれど、春日さんは困ったように笑い、マカロンをポンと口に放り込んだ。

 彼女は口の中の物をモグモグと咀嚼し、紅茶で流し込んでから、お酒を飲んでいる時のような荒っぽい溜め息をつく。

「みんなそういう〝補正〟があるのよねぇ。うちって結構大企業じゃない。で、子供の頃から周りの子は『春日ちゃんと仲良くするのよ』って言われてるワケ。そのお陰で喧嘩一つない人生だったわ」

 波風がないのはいい事……と思いがちだけど、春日さんには春日さんの苦しみがあるようだ。

「中学生の時、親友が他の女子に囲まれてシクシク泣いてるから、何事かと思って問い詰めてみたら、その子の好きな男子が私に告白して振られたんだって。でも私に悪気がないのは分かってるから、何も言えなくてつらい……って。気まずくなってその子とは疎遠になったけど、高校生になっても似たような事があったわ」

 美人でモテるがゆえの、苦しみもあったのか……。

「みんな私に遠慮して、言いたい事の一つも言えず、好きな人を取られても何も文句を言えない。……そんな状態で本当の友達なんてできないじゃない」

「……確かに……」

 春日さんの悩みを聞き、私は頷く。

「それなりに、取り巻きみたいな友達はいるのよ。でも一緒にいて心安らぐ……って感じではないわね。みんな美人で金持ちの友達しか持ちたがらなくて、会話も〝そういうの〟ばっかり。腹の底が見えないから、一緒にいても何だかつまらなくて」

 言ってから、春日さんは私とエミリさんを見てニヤリと笑う。
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