部長と私の秘め事

お迎え

「はい、お土産のショコラとマカロン。おやつにして。あと、ホテルから紅茶ももらったわ」

「わぁ! お土産まで……! ありがとうございます!」

 私は申し訳ないなと思いつつ、笑顔でお礼を言う。

 春日さんは喜んでいる私とエミリさんを見て頷き、尊さんに向かってどや顔をする。

「……うぜぇ」

「私、朱里さんと一晩過ごして、彼女の色んな面を知っちゃった」

「どうでもいいけど、セクハラすんなよ。女同士だろうがセクハラは成立するんだからな」

「朱里さんだって喜んでたもーん」

「はいはい、またな」

 尊さんは私の手を握り、歩き始める。

「じゃ、じゃあまた! ありがとうございました!」

 私はペコッと二人に会釈をし、手を振って尊さんについていく。

「またね~!」

「楽しかった! ありがとう!」

 手を振る二人にもう一度会釈をした私は、チラッと尊さんの顔を盗み見した。

「……妬いてます?」

「…………どちらともいえない」

「アンケートですか」

 彼の言い方がおかしくて、私はつい突っ込みを入れて笑う。

 私たちは二十八階のフロントから地下一階まで行き、別のエレベーターに乗り換えて地下二階の駐車場に向かう。

 尊さんの車に乗ると、早くも「帰ってきた」という気持ちになる。

「朱里」

「はい? ん」

 呼ばれて彼のほうを向いた瞬間、抱き寄せられてキスをされた。

 唇を押しつけられ、少し顔を離して吐息をつき、またついばみ合う。

 ちゅ、ちゅ、と音を立ててキスをしていると、気持ちがトロン……としてきて、今までの女子会のノリがどこかに飛んでいった。

 尊さんはたっぷりと私の唇を味わったあと、溜め息をついて顔を離した。

「……あんまり俺以外の奴に、見せるなよ」

「なにを?」

「色々」

 ムスッとした顔でエンジンをかけた尊さんを見て、調子に乗った私はニヤニヤして彼をつつく。

「なにを~?」

 昨晩の春日さんが乗り移ったのか分からないけど、ちょっと調子に乗りすぎたのか、尊さんはこちらをジロリと見て顔を近づけて言った。

「泣かすぞ」

「……ごめんなさい」

 私は謝りながらも、彼にそう言われてジワッと赤面した。

 女子会で尊さんは話のネタになってオモチャ扱いだったけれど、実際に彼を前にすると、完全無欠のスパダリだしこれ以上ない格好いい。

 女子会のテンションは、いわばクローズドなところでの本音だ。

 昨晩のはっちゃけた〝私〟は奥に引っ込み、いつもの上村朱里に戻らなければならない。

 尊さんは謝った私を見て「……ったく」と笑うとクシャッと頭を撫で、車を発進させた。

 彼は車を走らせつつ溜め息をつく。

「……まさか女子会に行った彼女を心配して、やきもきすると思わなかった」

 私はボソッと呟いた尊さんの言葉を聞いて、思わず表情筋が痛くなるほどにやついた。

「女子会に妬いてたんですか?」

「エミリが報告してくれたけど、すげぇ楽しそうだったな。俺の前でもあれだけはしゃぐ事ってなかったんじゃないか?」

「んー……、尊さんの前と女性の前とでは違いますからね。それに、エミリさんと春日さん、想像以上に面白い人で、めちゃ笑ったんですよ」

 昨晩を思い出してクスクス笑うと、尊さんも一緒になって微笑む。

「良かったな。今まで友達は中村さんぐらいしかいないって言ってたから、あいつらと馬が合ったみたいで安心した」

「そうですね。不思議です。私、結構人見知りなはずなのに、あのお二人とは最初からスルッと仲良くなれたんです」

「二人とも俺と怜香を中心とした修羅場に関わってるから、一番肝心なところを共有した仲間意識があったのかもな」

「かもですね。……あと、やっぱりお二人とも基本的に性格がいいです」

「そうか?」

 尊さんは私の言葉に被せるように、突っ込み気味に言う。
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