部長と私の秘め事
(結婚したら嫌でもバレるわけだし、その辺の話は尊さんとも前にしたよな……。で、今夜は綾子さん達を相手に色々聞かれるし)
考えたあと、私は覚悟を決めて溜め息をつき、微笑んだ。
「うん、お付き合いしてます。今までは内緒にしてたけど、今後の事を色々考えて今回の辞令みたいな結果になったの」
すると紗綾ちゃんは無言で叫び、プルプルと打ち震えてからピョンピョンと跳びはねる。
「推す! 推します! 断然推します!」
彼女は両手でサムズアップし、なんだかとても可愛い。
「ありがとうね、紗綾ちゃん。なんか元気出た」
お礼を言うと、彼女はグッと両手で拳を握る。
「これから風当たり強くなると思いますけど、全員が敵じゃないって覚えていてくださいね」
「うん、ありがとう。すっごく心強い」
「それで、もしも良かったら今度お茶してください」
コソッと言った紗綾ちゃんは、また「言っちゃったー!」とピョンピョン跳びはねる。
「私で良かったらぜひ。……じゃあ、連絡先交換しちゃう?」
「女神ー!」
テンションMAXで喜ぶ紗綾ちゃんと連絡先を交換したあと、そろそろデスクに戻らないとならなくなったので、「また」と別れた。
デスクに戻って残り時間でスマホをチェックすると、尊さんからメッセージが入っていた。
【お疲れ。まぁ、そうなるとは思ってた。店が決まったら教えてくれ。念のため近くに控えて、修羅場っぽくなったら行く。俺が行ったら余計にこじれるかもしれないが、もう部署を離れるわけだし、身綺麗にする覚悟を決めよう。中村さんにも連絡して、彼女にも連携をとってもらう】
ぬかりのない尊さんの返事に安心した私は、【了解です】というスタンプを送ってスマホをしまう。
(なるべく自分で、平和的に解決できたらいいんだけどな)
溜め息をついた私はチラッと恵を見て、いつも側にいてくれる彼女に感謝した。
恵が同じ会社にいてくれるのは、もともとは尊さんの導きがあってこそだけど、彼女の意志があっての事でもある。
ある意味、私は二人にずっと守られてきた。
秘書になって職場が変わっても恵とは親友だし、今まで通り頻繁に連絡を取り合ってお茶やらご飯やら行きたい。
(秘書になったあとはエミリさんに教えを請う事になるけど、うまくやっていけるよう頑張ろう)
彼女は酸いも甘いもかみ分けた大人だから、私に合わせてくれると思う。
でもその好意に甘えすぎないようにしないと。
(さしあたって、今夜のミッションを無事こなしてから……か)
私は綾子さんたちをチラッと見たあと、深呼吸してメールチェックを始めた。
**
綾子さんは会社近くのイタリアンバルを十八時半に予約したらしく、私たちはそれに合わせて退勤し、徒歩でお店に向かった。
綾子さんと仲良くしているのは、彼女より一つ年下の池内瑠美さんと、庄司美智香さんだ。
二人は私の一つ上の先輩で、同期同士仲がいい。
彼女たちが入社した時、綾子さんは新人ながらすでにヒット商品を出し、行動力があって美人な上、面倒見もいいので二人は彼女に心酔していったそうだ。
もともと綾子さんは仕事ができるし、人当たりが良くて明るく、決して意地悪な人じゃない。
異性関係についてだけ「将来いい暮らしをしてやる」という野心が強く、自分の望みのためなら手段を問わないところがあるだけだ。
(それ以外はいい人なんだよなぁ……)
私は無意識に溜め息をつく。
「ま、元気出せよ」
恵はボソッと言い、私の背中をポンと叩く。
「……綾子さんたちの事、どう思う?」
ボソッと尋ねると、恵は少し考えてから言った。
「悪い人ではないと思うんだよね。理不尽に人を責めるとか、学生みたいなイジメはしないじゃん。飲み会になると率先して幹事をするし、面倒見はいいと思う。人からどう見られるかを大切にしてると思うんだよね。……だから、自分の立場が悪くなる事はしないんじゃないかな」
奇しくも、恵の見立ては私と同じだった。
「私もそう思う。今まで仕事面で面倒を見てもらっていたから、変な関係にはなりたくないんだよね。……異性関係なんて、まったくのプライベートじゃん。そういうものとは切り離したいというか……」
「だな」
恵は短く言って頷く。
「……頑張ってみるけど、危なくなったらサポート宜しくね」
「ん、任しとき」
恵は私の背中をポンポンと叩き、「タダ飯やったー」と小さい声で言った。
私もタダ飯は嬉しい。
考えたあと、私は覚悟を決めて溜め息をつき、微笑んだ。
「うん、お付き合いしてます。今までは内緒にしてたけど、今後の事を色々考えて今回の辞令みたいな結果になったの」
すると紗綾ちゃんは無言で叫び、プルプルと打ち震えてからピョンピョンと跳びはねる。
「推す! 推します! 断然推します!」
彼女は両手でサムズアップし、なんだかとても可愛い。
「ありがとうね、紗綾ちゃん。なんか元気出た」
お礼を言うと、彼女はグッと両手で拳を握る。
「これから風当たり強くなると思いますけど、全員が敵じゃないって覚えていてくださいね」
「うん、ありがとう。すっごく心強い」
「それで、もしも良かったら今度お茶してください」
コソッと言った紗綾ちゃんは、また「言っちゃったー!」とピョンピョン跳びはねる。
「私で良かったらぜひ。……じゃあ、連絡先交換しちゃう?」
「女神ー!」
テンションMAXで喜ぶ紗綾ちゃんと連絡先を交換したあと、そろそろデスクに戻らないとならなくなったので、「また」と別れた。
デスクに戻って残り時間でスマホをチェックすると、尊さんからメッセージが入っていた。
【お疲れ。まぁ、そうなるとは思ってた。店が決まったら教えてくれ。念のため近くに控えて、修羅場っぽくなったら行く。俺が行ったら余計にこじれるかもしれないが、もう部署を離れるわけだし、身綺麗にする覚悟を決めよう。中村さんにも連絡して、彼女にも連携をとってもらう】
ぬかりのない尊さんの返事に安心した私は、【了解です】というスタンプを送ってスマホをしまう。
(なるべく自分で、平和的に解決できたらいいんだけどな)
溜め息をついた私はチラッと恵を見て、いつも側にいてくれる彼女に感謝した。
恵が同じ会社にいてくれるのは、もともとは尊さんの導きがあってこそだけど、彼女の意志があっての事でもある。
ある意味、私は二人にずっと守られてきた。
秘書になって職場が変わっても恵とは親友だし、今まで通り頻繁に連絡を取り合ってお茶やらご飯やら行きたい。
(秘書になったあとはエミリさんに教えを請う事になるけど、うまくやっていけるよう頑張ろう)
彼女は酸いも甘いもかみ分けた大人だから、私に合わせてくれると思う。
でもその好意に甘えすぎないようにしないと。
(さしあたって、今夜のミッションを無事こなしてから……か)
私は綾子さんたちをチラッと見たあと、深呼吸してメールチェックを始めた。
**
綾子さんは会社近くのイタリアンバルを十八時半に予約したらしく、私たちはそれに合わせて退勤し、徒歩でお店に向かった。
綾子さんと仲良くしているのは、彼女より一つ年下の池内瑠美さんと、庄司美智香さんだ。
二人は私の一つ上の先輩で、同期同士仲がいい。
彼女たちが入社した時、綾子さんは新人ながらすでにヒット商品を出し、行動力があって美人な上、面倒見もいいので二人は彼女に心酔していったそうだ。
もともと綾子さんは仕事ができるし、人当たりが良くて明るく、決して意地悪な人じゃない。
異性関係についてだけ「将来いい暮らしをしてやる」という野心が強く、自分の望みのためなら手段を問わないところがあるだけだ。
(それ以外はいい人なんだよなぁ……)
私は無意識に溜め息をつく。
「ま、元気出せよ」
恵はボソッと言い、私の背中をポンと叩く。
「……綾子さんたちの事、どう思う?」
ボソッと尋ねると、恵は少し考えてから言った。
「悪い人ではないと思うんだよね。理不尽に人を責めるとか、学生みたいなイジメはしないじゃん。飲み会になると率先して幹事をするし、面倒見はいいと思う。人からどう見られるかを大切にしてると思うんだよね。……だから、自分の立場が悪くなる事はしないんじゃないかな」
奇しくも、恵の見立ては私と同じだった。
「私もそう思う。今まで仕事面で面倒を見てもらっていたから、変な関係にはなりたくないんだよね。……異性関係なんて、まったくのプライベートじゃん。そういうものとは切り離したいというか……」
「だな」
恵は短く言って頷く。
「……頑張ってみるけど、危なくなったらサポート宜しくね」
「ん、任しとき」
恵は私の背中をポンポンと叩き、「タダ飯やったー」と小さい声で言った。
私もタダ飯は嬉しい。