部長と私の秘め事
「さっきも言ったけど、子供の頃から悪い言い方をすれば〝よりどりみどり〟だった。苦労せず学校で一番美人と言われる女子生徒と付き合えたし、社会人になったあともステータスの高い女性から真剣に交際を申し込まれた。……だから、『嫌な奴』『女たらし』って思われるだろうけど、自分から女性にアプローチした事ってほぼないんだ」
私は「まぁ、そうだろうな」と思いながら、可愛らしい指輪に視線を落とす。
キャラ物なんて恥ずかしくて身につけられず、服だっていつも飾り気のないベーシックな物ばかり選んでいた。
最近になってアクセサリーを着けるようになったけど、女性らしいデザインの物は照れくさくて避けている。
朱里は美人で可愛くて、彼女がお洒落な格好をするのを見るのは大好きだ。
だから「もっと可愛くて美しい姿を見せてほしい」と強く願っていた。
でも私は〝普通〟だ。
子供の頃はスカートを穿いたら兄貴に笑われて嫌な想いをしたし、制服以外にスカートを穿いた事はほぼない。フリルやレースなんて論外だ。
下着はボーイレッグのショーツや、余計な装飾のないシームレスなデザインの物を愛用している。
周りの友達も私について「そういう人だ」と思っているから、余計な世話を焼こうとしないし、茶々も入れない。
シンプルライフを送ってきた私に、キャラ物の指輪を贈ってきた男性は三日月さんが初めてだ。
(……でも、嫌じゃない自分がいる)
昼食はセントラルバザールにある店で食べ、そのあと少しショッピングをした。
私は朱里と一緒に店を見ていたけれど、思えばあのとき三日月さんはフラッと一人行動していたかもしれない。
(あの時に買ったのかな)
ランドの指輪なら、もっとキャラが主張していてもおかしくないけど、私のファッション傾向を見て、目立たない物を買ってくれたのだろう。
「……指輪を贈ったのも初めて?」
尋ねると、三日月さんは「勿論!」と頷く。
「言い方は悪いけど、指輪ってアクセサリーの中でも一番勘違いしやすいアイテムじゃないか。今まで女性にねだられてアクセサリーを贈った事はあったけど、指輪だけは避けてた。……でも、恵ちゃんなら、逆に指輪ぐらいの物を贈らないと真剣さが伝わらないと思ったんだ」
「そ……っ」
――それって特別扱いじゃないの!?
何回も特別だと言われているのに、いまだ信じられない私はカッと赤面する。
「とりあえず、今はそろそろレストランに行こうか。尊と朱里ちゃんなら問題ないと思うけど、遅れすぎたらスタッフさんに悪いし」
「そっ、そうだ!」
スクッと立ちあがると、三日月さんが「元気いいね」と笑う。
彼は立ちあがると、私に向けて手を差し伸べる。
「え?」
もしかして……。
目を見開いて棒立ちになってると、三日月さんは「行くよ」と言って手を握ってきた。
――うわああああああ……!
私は真っ赤になってぎこちなく歩き、エレベーターホールに向かう。
彼はエレベーターに乗っても一階についても手を離してくれず、このままでは手を繋いでいるところを朱里に見られてしまう。
歩いていると人々の視線を感じ、自分と彼が釣り合っていない事を自覚する。
だからレストランの赤い店構えが見えた時、私はおずおずと言った。
「み、三日月さん……」
「涼」
「はい?」
「涼って呼んで」
(名前呼びーっ!!)
私は内心で膝から崩れ落ち、両手で顔を覆いたくなる。
「ど、どうして、そうやってすぐ距離を詰めて……」
「俺の事を涼って呼んでからレストランに入るよ。さん、はい」
「りょっ、…………涼、…………さん……」
「さん、はい」を言われた私は、つい言わなければならない気持ちになって、震える声で彼の名前を呼んでしまった。
「はい、よくできました」
彼はにっこり笑って私の頭をポンポンし、「腹減ったね」と言ってから私の手を握ったままレストランに入っていった。
私は「まぁ、そうだろうな」と思いながら、可愛らしい指輪に視線を落とす。
キャラ物なんて恥ずかしくて身につけられず、服だっていつも飾り気のないベーシックな物ばかり選んでいた。
最近になってアクセサリーを着けるようになったけど、女性らしいデザインの物は照れくさくて避けている。
朱里は美人で可愛くて、彼女がお洒落な格好をするのを見るのは大好きだ。
だから「もっと可愛くて美しい姿を見せてほしい」と強く願っていた。
でも私は〝普通〟だ。
子供の頃はスカートを穿いたら兄貴に笑われて嫌な想いをしたし、制服以外にスカートを穿いた事はほぼない。フリルやレースなんて論外だ。
下着はボーイレッグのショーツや、余計な装飾のないシームレスなデザインの物を愛用している。
周りの友達も私について「そういう人だ」と思っているから、余計な世話を焼こうとしないし、茶々も入れない。
シンプルライフを送ってきた私に、キャラ物の指輪を贈ってきた男性は三日月さんが初めてだ。
(……でも、嫌じゃない自分がいる)
昼食はセントラルバザールにある店で食べ、そのあと少しショッピングをした。
私は朱里と一緒に店を見ていたけれど、思えばあのとき三日月さんはフラッと一人行動していたかもしれない。
(あの時に買ったのかな)
ランドの指輪なら、もっとキャラが主張していてもおかしくないけど、私のファッション傾向を見て、目立たない物を買ってくれたのだろう。
「……指輪を贈ったのも初めて?」
尋ねると、三日月さんは「勿論!」と頷く。
「言い方は悪いけど、指輪ってアクセサリーの中でも一番勘違いしやすいアイテムじゃないか。今まで女性にねだられてアクセサリーを贈った事はあったけど、指輪だけは避けてた。……でも、恵ちゃんなら、逆に指輪ぐらいの物を贈らないと真剣さが伝わらないと思ったんだ」
「そ……っ」
――それって特別扱いじゃないの!?
何回も特別だと言われているのに、いまだ信じられない私はカッと赤面する。
「とりあえず、今はそろそろレストランに行こうか。尊と朱里ちゃんなら問題ないと思うけど、遅れすぎたらスタッフさんに悪いし」
「そっ、そうだ!」
スクッと立ちあがると、三日月さんが「元気いいね」と笑う。
彼は立ちあがると、私に向けて手を差し伸べる。
「え?」
もしかして……。
目を見開いて棒立ちになってると、三日月さんは「行くよ」と言って手を握ってきた。
――うわああああああ……!
私は真っ赤になってぎこちなく歩き、エレベーターホールに向かう。
彼はエレベーターに乗っても一階についても手を離してくれず、このままでは手を繋いでいるところを朱里に見られてしまう。
歩いていると人々の視線を感じ、自分と彼が釣り合っていない事を自覚する。
だからレストランの赤い店構えが見えた時、私はおずおずと言った。
「み、三日月さん……」
「涼」
「はい?」
「涼って呼んで」
(名前呼びーっ!!)
私は内心で膝から崩れ落ち、両手で顔を覆いたくなる。
「ど、どうして、そうやってすぐ距離を詰めて……」
「俺の事を涼って呼んでからレストランに入るよ。さん、はい」
「りょっ、…………涼、…………さん……」
「さん、はい」を言われた私は、つい言わなければならない気持ちになって、震える声で彼の名前を呼んでしまった。
「はい、よくできました」
彼はにっこり笑って私の頭をポンポンし、「腹減ったね」と言ってから私の手を握ったままレストランに入っていった。