部長と私の秘め事
予約時間は十九時で、私と尊さんは十分前にはレストランの席についていた。
お店は赤い店構えが印象的で、フロアの天井からは大輪のお花のような赤いランプが下がっており、壁はダマスク柄が入った赤とチョコレートブラウンだ。
椅子は黒でテーブルはダークブラウンの木目調、柱はダマスク柄の彫りが入ったミラー加工になり、ランプと似た花柄のウォールペイントがあってお店全体の雰囲気に合わせている。
全体的にシックながらも華やかな印象の内装は、特別感があり、私はお客さんが入り込まないように気をつけて内装を撮っていた。
テーブルの上には黒いランチョンマットが敷かれ、赤い縁取りのスクエアプレートが置かれてある。
先にお水を出してもらった私たちは、それをちびちび飲みつつ恵と涼さんを待っていた。
「恵に春が訪れたと思っていいと思うんですが、……大丈夫でしょうか?」
「涼はああ見えて、ロックオンしたらグイグイいくタイプだと思うからなぁ……」
「ロックオン! したんですね? やっぱり」
笑顔で言うと、尊さんもどこか嬉しそうに言った。
「あいつ、ずっと野生動物とか秘境みたいな所、ゲテモノとかにしか興味を持たなかったから、俺も意外だったよ。中村さんの媚びないところが良かったんだろうな」
「確かに、恵はとても自然体ですからね」
私は親友のチャームポイントを口にし、ニコニコする。
「彼女は下手に男に媚びないし、物事の本質をまっすぐ見ているように感じる。それに中村さんって分かりやすい〝欲〟を持っていないように思える。『いい男と付き合いたい』という欲望から色仕掛けするとか、『良く見られたい』という思いから着飾るとか……」
「確かに……、恵って欲が少ないほうかもしれません」
私は「美味しい物を沢山食べたい」とか「コスメや服がほしい」とか、欲の強い方だけど、恵はあまり食にも見た目にも興味を持っていないように見える。
ムシャクシャした時は一緒にラーメンを食べて、居酒屋で飲んで喋ったあと、海に行ってボーッとする。
それでも足りない時は、「ちょっと山行ってくる」と言って関東付近の山に向かったり、ソロキャンをしに行く。
物欲もあまりないほうで、キャンプ道具や登山道具を買う他は、特にお金を使わないらしい。
恵は私を見て「羨ましい」と言うけれど、私も恵みたいにシンプルに生きてみたいと思っている。
人はみんな、隣の芝生が青いものだ。
そうこう話しているうちに予約時間になってしまい、尊さんは腕時計を見てから席を立つ。
「ちょっとスタッフさんに遅れるって言ってくる」
「はい」
彼は入り口近くに待機しているスタッフさんとにこやかに話し、ほどなくして戻ってくる。
「そう遅くはならないと思うから、もう少し待つか」
「はい」
そのあとも尊さんと話しながら待っていると、涼さんに手を握られた恵が真っ赤になってやってきた。
(おや? おや? お? おおお?)
私は目を丸くして二人をガン見し、尊さんも「おお……」と感心したように呟いている。
恵は席に着いたあと、俯いて耳まで真っ赤になっている。
「……ねぇねぇ、恵」
私は彼女の耳元でコソコソ囁いたけれど、テーブルの下でガッと手を握られる。
「みなまで言うな」
ボソッと一言だけ言われ、今はお照れタイムなのだと察した私は、あえて空気を読まずに言った。
「お腹空いた! お料理持ってきてもらいましょうか!」
ニコッと笑って言うと、尊さんは「そうだな」と頷いてスタッフを呼んだ。
レストランはフレンチで、盛り付けがとても綺麗で私と恵ははしゃいで写真を撮った。
恵ははしゃいでお照れを誤魔化そうとしているらしく、いつになくハイテンションだ。
しかし、私は彼女の左手の薬指に嵌まっている指輪を見逃さなかった。あとで尋問ですな。
前菜は真鯛とアスパラを使ったカルパッチョ風のサラダから始まり、次の一皿は新鮮で大きな帆立を海鮮のお出汁のスープと、それで作ったエスプーマ(泡)とキャヴィアをのせたもの。
スープは香りのいいキノコを使ったコンソメスープ、魚料理は平目は皮目をパリッと、身はふっくらジューシーにソテーしたもの、メインは仔羊のローストに筍や緑鮮やかな豆類を添えたものが出され、写真に収めつつ、料理を平らげていく。
デザートは旬の夏みかんとジュレ、バニラアイスの盛り合わせだ。
なんと、デザートのプレートにはチョコレートソースでメッセージが書かれてあった。しかも私と恵、二人ともにだ。
私のプレートには『Happy 5th Annyversary』と書いてあり、付き合って五か月記念を祝ってくれている。
そして恵のプレートには……『Will you go out with me?』と書かれてある。
(『僕と付き合ってくれますか?』キター!!)
お店は赤い店構えが印象的で、フロアの天井からは大輪のお花のような赤いランプが下がっており、壁はダマスク柄が入った赤とチョコレートブラウンだ。
椅子は黒でテーブルはダークブラウンの木目調、柱はダマスク柄の彫りが入ったミラー加工になり、ランプと似た花柄のウォールペイントがあってお店全体の雰囲気に合わせている。
全体的にシックながらも華やかな印象の内装は、特別感があり、私はお客さんが入り込まないように気をつけて内装を撮っていた。
テーブルの上には黒いランチョンマットが敷かれ、赤い縁取りのスクエアプレートが置かれてある。
先にお水を出してもらった私たちは、それをちびちび飲みつつ恵と涼さんを待っていた。
「恵に春が訪れたと思っていいと思うんですが、……大丈夫でしょうか?」
「涼はああ見えて、ロックオンしたらグイグイいくタイプだと思うからなぁ……」
「ロックオン! したんですね? やっぱり」
笑顔で言うと、尊さんもどこか嬉しそうに言った。
「あいつ、ずっと野生動物とか秘境みたいな所、ゲテモノとかにしか興味を持たなかったから、俺も意外だったよ。中村さんの媚びないところが良かったんだろうな」
「確かに、恵はとても自然体ですからね」
私は親友のチャームポイントを口にし、ニコニコする。
「彼女は下手に男に媚びないし、物事の本質をまっすぐ見ているように感じる。それに中村さんって分かりやすい〝欲〟を持っていないように思える。『いい男と付き合いたい』という欲望から色仕掛けするとか、『良く見られたい』という思いから着飾るとか……」
「確かに……、恵って欲が少ないほうかもしれません」
私は「美味しい物を沢山食べたい」とか「コスメや服がほしい」とか、欲の強い方だけど、恵はあまり食にも見た目にも興味を持っていないように見える。
ムシャクシャした時は一緒にラーメンを食べて、居酒屋で飲んで喋ったあと、海に行ってボーッとする。
それでも足りない時は、「ちょっと山行ってくる」と言って関東付近の山に向かったり、ソロキャンをしに行く。
物欲もあまりないほうで、キャンプ道具や登山道具を買う他は、特にお金を使わないらしい。
恵は私を見て「羨ましい」と言うけれど、私も恵みたいにシンプルに生きてみたいと思っている。
人はみんな、隣の芝生が青いものだ。
そうこう話しているうちに予約時間になってしまい、尊さんは腕時計を見てから席を立つ。
「ちょっとスタッフさんに遅れるって言ってくる」
「はい」
彼は入り口近くに待機しているスタッフさんとにこやかに話し、ほどなくして戻ってくる。
「そう遅くはならないと思うから、もう少し待つか」
「はい」
そのあとも尊さんと話しながら待っていると、涼さんに手を握られた恵が真っ赤になってやってきた。
(おや? おや? お? おおお?)
私は目を丸くして二人をガン見し、尊さんも「おお……」と感心したように呟いている。
恵は席に着いたあと、俯いて耳まで真っ赤になっている。
「……ねぇねぇ、恵」
私は彼女の耳元でコソコソ囁いたけれど、テーブルの下でガッと手を握られる。
「みなまで言うな」
ボソッと一言だけ言われ、今はお照れタイムなのだと察した私は、あえて空気を読まずに言った。
「お腹空いた! お料理持ってきてもらいましょうか!」
ニコッと笑って言うと、尊さんは「そうだな」と頷いてスタッフを呼んだ。
レストランはフレンチで、盛り付けがとても綺麗で私と恵ははしゃいで写真を撮った。
恵ははしゃいでお照れを誤魔化そうとしているらしく、いつになくハイテンションだ。
しかし、私は彼女の左手の薬指に嵌まっている指輪を見逃さなかった。あとで尋問ですな。
前菜は真鯛とアスパラを使ったカルパッチョ風のサラダから始まり、次の一皿は新鮮で大きな帆立を海鮮のお出汁のスープと、それで作ったエスプーマ(泡)とキャヴィアをのせたもの。
スープは香りのいいキノコを使ったコンソメスープ、魚料理は平目は皮目をパリッと、身はふっくらジューシーにソテーしたもの、メインは仔羊のローストに筍や緑鮮やかな豆類を添えたものが出され、写真に収めつつ、料理を平らげていく。
デザートは旬の夏みかんとジュレ、バニラアイスの盛り合わせだ。
なんと、デザートのプレートにはチョコレートソースでメッセージが書かれてあった。しかも私と恵、二人ともにだ。
私のプレートには『Happy 5th Annyversary』と書いてあり、付き合って五か月記念を祝ってくれている。
そして恵のプレートには……『Will you go out with me?』と書かれてある。
(『僕と付き合ってくれますか?』キター!!)