想いと共に花と散る
 しばしの沈黙の後、沖田は山南に向けていた視線を落とす。
 何度か口を開けたり閉じたりするが、やがて渋々語った。

「何となくですけど……その辻斬りの犯人が、分かったような気がして」
「どういう意味だ」

 小さくも確かに彼が口にした言葉は、座敷にいる全員が耳にした。
 土方が凄みを利かせた目を沖田に向け、前のめりになりながら問い掛ける。
 座敷の中には重く沈んだ空気が漂い始めた。雪だけではなく、他の皆の表情が陰るほどだ。

「土方さん、この一件を俺に任せてはもらえませんか」
「元からそのつもりだったが……何かあんのか?」
「責任を取るためです」

 意図的に逸らされていた視線は、真っ直ぐと土方に向けられていた。
 土方の問いに間髪入れず答えた沖田の目には、確かな覚悟が滲んでいる。

「どうする、近藤さん」
「……各隊に任せようと思っていたんだが、総司が自ら名乗るのならば致し方あるまい。この辻斬りの捜索は、トシと総司率いる一番隊、そして雪君。君達に任せたい」

 近藤の決断に異論を唱えるものは誰もいない。言葉にはせずとも、全員の意見が合致したのを空気で感じた。

「いや、やっぱりいいか」

 これで話し合いが終わるかと思われた矢先、藤堂が名乗りを上げた。
 何事かと一同の視線が藤堂に向かう。その視線には、微かな不信感が滲み出ていた。
 藤堂は挙げていた手を降ろし、改まった態度を取り直す。

「俺も、捜索に入れてくれないか」
「平助もか? 人数が大いに越したことはないが、何故そこまで?」
「雪と同じだから、っていうのじゃ理由にはならないですかね」
「うぅむ、どうしたものか……」

 腕を組み、唸りながら考える近藤を真っ直ぐと見つめる藤堂は真剣そのものだ。
 誰も彼が半端な気持ちで言っていないと理解する。

「平助の同行も願い出ます」
「総司?」

 悩み倦ねる近藤に痺れを切らしたのか、本心は計り知れないが沖田は確かに言った。
 事前に打ち合わせをしていたわけでもなんでもないというのに、すでに沖田と藤堂の間には無言の了承がある。
 戸惑いを見せるのは、二人と雪以外の者達。
 辻斬りの捜索を任せられないなんてはずはなく、年若いとは言え幹部という立場だ。
 他の者達が戸惑いを見せるのは、沖田、藤堂、雪の間に確かな結託が見られたから他ならない。

「いいんじゃねぇか」

 その一言で、バラバラに分かれていた皆の決断がまとまりを得た。

「よし、それでは改めて、辻斬り捜索はトシ、総司、平助、雪君達に任せる」
「大元の指揮は俺が取る。山崎、お前は引き続き新たな情報がないか調査を続けてくれ」
「御意」

 瞬きの合間に山崎の姿は消え、直接辻斬りの調査に当たらない幹部達は、座敷を出て各々の任務に向かった。
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