想いと共に花と散る
 
(あいつ等なら、こういう場にもすぐ馴染むのか)

 目を閉じると、あの頃の騒がしい光景が瞼の裏に蘇る。
 御所の警護を無事に終えた後の宴、最初で最後になってしまった花見。
 誰もが同じ酒を酌み交わし、同じ場所で、同じものに思いを馳せていた。

(誰も、いなくなっちまったな)

 死んだ者、離脱した者、違う道を志した者。
 彼らとあの頃の日々を送ることは、もう二度と叶わない。

「なぁ、土方」

 できるだけ目立たないようにと部屋の隅にいたのに、この男は何処にいても目ざとく見つけてくる。
 雪の元を離れた次は、土方が揶揄いの的となるらしい。
 盃を片手に近寄ってきた榎本は、隣りに立つなり容赦なく言ってのける。

「俺はあんたを信用しちゃいない」
「奇遇だな。俺もだ」

 そう言って意地の悪い笑みを浮かべた榎本は、一気に杯を傾けた。

「だからいいんだ。信用で繋がる軍なんざ、脆いだけだからな」
「……理屈だけは達者だな」
「理屈で生き延びてきたんだ、俺ぇはよ」

 この場は和やかで、笑いもある。けれど、その下に流れているのは、確かな緊張だ。
 ここは、戦場の延長にある日常なのだ。

「にしても、面白ぇもん連れてんじゃねぇか」
「は?」

 やけに楽しげに言う榎本の視線の先を追うと、市村と会話に花を咲かせる雪がいる。
 連れている、という言葉からして、この蝦夷地で出会った市村のことを指しているわけではないだろう。
 となれば、彼が言う「面白ぇもん」というのは、雪のことであって。
 その気がなくとも、榎本が雪を気にするのも、市村が慣れた様子で話し掛けるのも、どうにも気に入らない。

「籠の中の鳥と見せかけて、意外と大空を舞う鳥、ってか」

 横目で睨めつければ、それすらも期待通りの反応という感じで榎本は笑う。

「黙ってろ」
「おう、怖い怖い。さすがは鬼の副長さんだ」
「うるせぇ」

 どうも、こいつと話していると調子が狂う。
 さっさと抜け出したいところだが、雪が未だ市村と楽しげにしていているから、そういうわけにもいかない。

「親子っつーには、ちぃと顔が似てねぇよなぁ」
「……見るな」
「なあ、何処であんなのを拾ったんだ? 俺ぇは羨ましいぜ」

 何処で拾った。そんなのただの偶然見つけたに過ぎない。
 変な格好をしていて、浪士に絡まれても逃げようとしていないなくて、腹立つ顔していたから、気まぐれで連れて帰っただけだ。

「てめぇにゃ関係ない」
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