想いと共に花と散る
似ているのは、性格だけではない。
二十歳前後に見えるつねは、今の小夜と同じ歳頃だ。つまり、まともに成長していれば雪も同じく二十歳になっている。
こんな風に小夜と京の町へ出掛けた時も、こうして手を引かれて町の中を走った。
いつだって、雪の周りには手を引いて知らない世界へ連れて行ってくれる人がいたのだ。
「何処に行こうかしらねぇ」
「……何処へでも行きたいです」
「だったら、今日は函館制覇するわよぉー!」
「そ、それは難しいかな……」
久しぶりに、肩の力を抜いて歩いている気がした。
函館の町は、今日も人通りが多い。港から運ばれてきた荷を下ろす男達の声、店先で客を呼ぶ女将の張りのある声、異国訛りの混じる会話。どれもが雪にとっては新鮮で、足取りが自然と軽くなる。
「ここは?」
「この店は干物屋。ここの鰊は脂が乗ってて美味しいのよ」
「そんなに違うんですか?」
「違うわよー。兄様達は全然気付いてくれないけれど」
つねは楽しそうに笑い、籠の中身を確認しながら歩く。
雪はそれに付いて行きながら、店先に並ぶ品々を目で追った。
布屋では、染めの違いを教わりながら反物に触れ、文具屋では、見慣れない形の硯や異国風のペン先に足を止めた。
「字を書く人には、道具も大事なのよね」
「……土方さん、筆はいつも同じものを使ってる」
「変えない人ほど、こだわりがあるらしいのだけれど……人の感性って難しいわぁ」
つねの言葉に、雪は思わず笑った。
呑気なつねの言葉を聞いているとすぐに調子が狂う。けれど、今はそれが不思議と心地よい。
「あ、甘味処!」
好奇心旺盛な子供のように目に付いて気になったものがあれば、つねはすぐに誘われてしまう。
雪はそんな彼女に手を引かれるまま振り回されていた。
つねが立ち寄った甘味処は、雪の知っている京の和菓子を提供する場所とは少し違った。
わらび餅やみたらし団子などの和菓子はもちろん置いているようだが、それ以外に見慣れない菓子も置かれている。
「焼き菓子なんてあるんだ……」
その店は、諸外国との貿易港が近くにあるからか西洋の菓子が多く並んでいた。
つねはその珍しい菓子に目を奪われ、湯気に誘われて焼き菓子を一つ買った。それを半分に割って雪へと分け与える。
「はい、どーぞ」
「ありがとうございます」
半分を受け取ると、温かさが乗っている内に口に入れた。素朴な甘さが口に広がり、冷えた指先まで温まる。
「こうしていると、戦なんて遠い話みたいよねぇ」
「……はい」
それが、今はただ嬉しかった。
戦の気配がない。そんな日々の平穏さを雪はよく知っている。
二十歳前後に見えるつねは、今の小夜と同じ歳頃だ。つまり、まともに成長していれば雪も同じく二十歳になっている。
こんな風に小夜と京の町へ出掛けた時も、こうして手を引かれて町の中を走った。
いつだって、雪の周りには手を引いて知らない世界へ連れて行ってくれる人がいたのだ。
「何処に行こうかしらねぇ」
「……何処へでも行きたいです」
「だったら、今日は函館制覇するわよぉー!」
「そ、それは難しいかな……」
久しぶりに、肩の力を抜いて歩いている気がした。
函館の町は、今日も人通りが多い。港から運ばれてきた荷を下ろす男達の声、店先で客を呼ぶ女将の張りのある声、異国訛りの混じる会話。どれもが雪にとっては新鮮で、足取りが自然と軽くなる。
「ここは?」
「この店は干物屋。ここの鰊は脂が乗ってて美味しいのよ」
「そんなに違うんですか?」
「違うわよー。兄様達は全然気付いてくれないけれど」
つねは楽しそうに笑い、籠の中身を確認しながら歩く。
雪はそれに付いて行きながら、店先に並ぶ品々を目で追った。
布屋では、染めの違いを教わりながら反物に触れ、文具屋では、見慣れない形の硯や異国風のペン先に足を止めた。
「字を書く人には、道具も大事なのよね」
「……土方さん、筆はいつも同じものを使ってる」
「変えない人ほど、こだわりがあるらしいのだけれど……人の感性って難しいわぁ」
つねの言葉に、雪は思わず笑った。
呑気なつねの言葉を聞いているとすぐに調子が狂う。けれど、今はそれが不思議と心地よい。
「あ、甘味処!」
好奇心旺盛な子供のように目に付いて気になったものがあれば、つねはすぐに誘われてしまう。
雪はそんな彼女に手を引かれるまま振り回されていた。
つねが立ち寄った甘味処は、雪の知っている京の和菓子を提供する場所とは少し違った。
わらび餅やみたらし団子などの和菓子はもちろん置いているようだが、それ以外に見慣れない菓子も置かれている。
「焼き菓子なんてあるんだ……」
その店は、諸外国との貿易港が近くにあるからか西洋の菓子が多く並んでいた。
つねはその珍しい菓子に目を奪われ、湯気に誘われて焼き菓子を一つ買った。それを半分に割って雪へと分け与える。
「はい、どーぞ」
「ありがとうございます」
半分を受け取ると、温かさが乗っている内に口に入れた。素朴な甘さが口に広がり、冷えた指先まで温まる。
「こうしていると、戦なんて遠い話みたいよねぇ」
「……はい」
それが、今はただ嬉しかった。
戦の気配がない。そんな日々の平穏さを雪はよく知っている。