想いと共に花と散る
「言い訳にもならないことは承知している。それでも、仲間として信頼を置いてくれていたお前達を裏切るような真似をしてしまい、申し訳なかった」
「早川には逆らえなかったんだ。あいつは、自分に従わせるためならどんな手でも使った。俺は恋仲の女を、永井は床に伏せる祖母を人質に取られて……」
許してほしいわけではない。二人は最後にそう付け加えて、目を伏せた。
たとえ、大切な人が人質に取られていたとしても、二人が辻斬りとして京の町を脅かしていたことには変わりない。
それでも、一つだけ一貫していることがあった。
「お二人は、決して許されないことをしたと思います。でも……誰も傷つけていない」
伏せられていた目が大きく開いた。雪へと向けられた視線には、驚きが満ちている。
そんな二人を横目に、次は雪が目を伏せた。
「辛かったです。あの時、私を“禍の種”だって言ったの」
「すまなかった!」
そう言うしか無かったのだろう。
この数年間、彼らはずっと過去の過ちに縛られ生きてきた。そんな彼らが謝罪の言葉一つで許されることはない。
そして雪も、謝られたくらいで二人を許そうとは思わなかった。
けれど、それでも勘違いしてはいけないことがある。二人は、一度も人を傷つけてはいなかった。傷付いていたのは自分達だったのだ。
「でも、事実だった。私は、皆に守られてばかりいましたから。夜に永井さんに会った時も、私は土方さん達に守られた」
あの一件があったからこそ、雪は守られてばかりはいられないと思えた。自分も彼らと共に戦おうと思えたのだ。
「過去のことを水に流そうとは言いません。ただ、互いにこれまでとは違う今がある。だったら、その今を一生懸命生きましょう」
「……到底、餓鬼には見えんな」
「やはり、副長の小姓を務めているだけあって肝が座っている」
褒められているのかどうか怪しいが、雪は二人に微笑みを向けた。
二人もぎこちないながらに笑い返す。この瞬間、新撰組一番隊所属の永井と横山はいなくなった。
いるのは、西洋風の雑貨を取り扱う店の店員だけ。
「ねぇ、雪ちゃん。これは何かしら!」
つねがいたから、二人を前にして冷静になれたのかもしれない。ここで雪が冷静さを欠いてしまえば、暴走するつねを止める人がいなくなってしまう。
「それは、根付けだ」
「根付け……綺麗ねぇ」
金属製の根付を手にして振り返ったつねの元に横山が近寄る。
あれやこれやと見つけては手に取って目を光らせるつねに、横山が必死になって説明を施した。