想いと共に花と散る
なんで。どうして。何処に。いつ。誰が。何を。
「なんで……っ!」
雪の部屋は、洋館の元物置部屋を片付けただけのもので奥まった場所にある。そう誰かが入ることはないはずだ。
部屋を飛び出しても人の気配があるはずもない。
「はあ、はあ、はあ……っ!」
みるみる内に顔が青ざめていくのを感じる。今の自分がどれだけはしたない格好をしているかなどどうでもいい。
今は探さなくては。失くしてはいけないものを見つけなくては。
廊下を駆けて、設置されている物を見つけては持ち上げる。花瓶、絵画、棚、机。隅から隅まで目を向けても、それらしいものは一切見つからない。
「なんで、なんで無いの? なんで―――」
「嬢ちゃん?」
すぐ頭上から榎本の声が聞こえた。しゃがみ込んだまま顔を上げれば、驚いた様子の榎本と目が合う。
「うおっと……なんつー格好で出歩いてんだ」
「っ……な、無いんです!」
襦袢姿であることも忘れ、雪は榎本に掴み掛かって叫んだ。
年頃の女子の襦袢姿など見ていられない榎本は、咄嗟に雪から目を逸らす。
しかし、雪はそんなことにも意識が回らないほど正気を失っていた。
「無い? 何か落としちまったのか?」
「違う! 絶対に落としてなんかないっ!」
「つっても、無いってんなら落としたくらいしか……」
そこまで言い掛けて、榎本の言葉は詰まった。
掴み掛かってきていた雪の手が離れたかと思えば、青白い顔を手で覆い始めたからだ。
肩を激しく上下させ、溢れる言葉は「なんで」「どうして」ばかり。
只事ではないのは明白であった。
「おい。何があった。まずは落ち着け」
「落ち着いてなんてられない! あれは、大事な物で……っ!」
「兄様? どうかなさった?」
「榎本、こんな時間から騒がしくするとは何事だ。少しは場を考え、て……」
想像以上に雪の声は洋館中に響いていたらしく、ぞろぞろと人が集まってきた。
「何をしている!?」
襦袢姿の雪が半泣きで榎本に肩を掴まれているから、誤解を招くのは仕方ないことと言えば仕方がない。
廊下の先から現れた大鳥は、普段の彼の様子からは想像もつかないほど血相を変えて駆けてきた。
「ちょ、ちょっと待て! 俺は何もしてねぇって!」
「ならば、この状況をどう説明するつもりだ!?」
「だから、俺にも分からねぇんだって……っ!」
完全に状況は地獄と化していた。榎本は雪の寝込みを襲った哀れな男として大鳥に怒鳴られている。
そんな中、つねだけはその違和感に気づいていた。
大鳥の傍から離れた彼女は、顔を覆ってぶつぶつとわけの分からないことを呟く雪の前に屈む。
「なんで……っ!」
雪の部屋は、洋館の元物置部屋を片付けただけのもので奥まった場所にある。そう誰かが入ることはないはずだ。
部屋を飛び出しても人の気配があるはずもない。
「はあ、はあ、はあ……っ!」
みるみる内に顔が青ざめていくのを感じる。今の自分がどれだけはしたない格好をしているかなどどうでもいい。
今は探さなくては。失くしてはいけないものを見つけなくては。
廊下を駆けて、設置されている物を見つけては持ち上げる。花瓶、絵画、棚、机。隅から隅まで目を向けても、それらしいものは一切見つからない。
「なんで、なんで無いの? なんで―――」
「嬢ちゃん?」
すぐ頭上から榎本の声が聞こえた。しゃがみ込んだまま顔を上げれば、驚いた様子の榎本と目が合う。
「うおっと……なんつー格好で出歩いてんだ」
「っ……な、無いんです!」
襦袢姿であることも忘れ、雪は榎本に掴み掛かって叫んだ。
年頃の女子の襦袢姿など見ていられない榎本は、咄嗟に雪から目を逸らす。
しかし、雪はそんなことにも意識が回らないほど正気を失っていた。
「無い? 何か落としちまったのか?」
「違う! 絶対に落としてなんかないっ!」
「つっても、無いってんなら落としたくらいしか……」
そこまで言い掛けて、榎本の言葉は詰まった。
掴み掛かってきていた雪の手が離れたかと思えば、青白い顔を手で覆い始めたからだ。
肩を激しく上下させ、溢れる言葉は「なんで」「どうして」ばかり。
只事ではないのは明白であった。
「おい。何があった。まずは落ち着け」
「落ち着いてなんてられない! あれは、大事な物で……っ!」
「兄様? どうかなさった?」
「榎本、こんな時間から騒がしくするとは何事だ。少しは場を考え、て……」
想像以上に雪の声は洋館中に響いていたらしく、ぞろぞろと人が集まってきた。
「何をしている!?」
襦袢姿の雪が半泣きで榎本に肩を掴まれているから、誤解を招くのは仕方ないことと言えば仕方がない。
廊下の先から現れた大鳥は、普段の彼の様子からは想像もつかないほど血相を変えて駆けてきた。
「ちょ、ちょっと待て! 俺は何もしてねぇって!」
「ならば、この状況をどう説明するつもりだ!?」
「だから、俺にも分からねぇんだって……っ!」
完全に状況は地獄と化していた。榎本は雪の寝込みを襲った哀れな男として大鳥に怒鳴られている。
そんな中、つねだけはその違和感に気づいていた。
大鳥の傍から離れた彼女は、顔を覆ってぶつぶつとわけの分からないことを呟く雪の前に屈む。