孤独な令嬢と、ある教師の話。



学園の敷地内には騎士科、普通科、魔術科と学科ごとに校舎が分かれている。魔術科校舎は向かって真ん中の建物だと案内があったので、確認しつつ恐らく同じ魔術科志望の人々の後ろに付いて行く。魔術科の試験は3つの教室に分かれて行われるようで、普通科、騎士科より少ないようだ。引き篭もりだったオリヴィアは大勢人がいる場所は疲れてしまうので、少ない方が良い。

試験は数学、基礎魔術理論、外国語、歴史、政治経済、地理の6科目。入学前なので魔術の実技はなく、筆記のみ。先んじて魔術師を講師として雇い実技を学ぶ者もいるが、全員が入学前に学べるわけではないので公平を期すために筆記試験のみだ。オリヴィアも魔術師を講師として呼ぶことは叶わず、兎に角座学で知識を詰め込んだ。実際に魔術を行使するとなると、理論や魔術式を覚えないわけにはいかないので決して無駄ではない。試験開始ギリギリまで書物を読み込んだ。

試験は引っ掛け問題や答えを導くまで時間のかかるものもあったが、解けずに時間がなくなるということはなく全ての欄を埋めることが出来た。試験の成績が首席であったり、上位であったりすると色々特例が許されると聞いた。寮の1人部屋や専用の自習室の確保といった、周囲の人目を気にせず勉学に励める環境を得られる。魔術師の素質がある者は総じて人付き合いを厭い、そんな暇があるなら研究をしたいという者が多い。凡そ社会生活に馴染めなさそうな優秀な魔術師の卵に思う存分才能を発揮してもらおう、という計らいらしい。オリヴィアは特例を狙っていたわけではない。自分より優秀な者はたくさんいる。せいぜい中の上くらいの成績で入学出来たら、と思っていた。

だから後日、合格通知と首席入学だと書かれた書類が届いた時は驚きを隠せなかった。リカはオリヴィア以上に喜び、料理人に無理を言っていつもより豪勢な食事を頼んでいた。父と姉はどうせオリヴィアは居なくなるからと、リカのことを見逃してくれていたようだ。

一応父に合格したことと主席であったことを報告したが、不愉快そうな顔で一瞥されただけだった。離れに戻る際、久しぶりに姉の姿を確認したがオリヴィアを見た途端近くにあった花瓶を投げて来た。咄嗟に避けるとガシャン、と大きな音を立てて床に落ちた花瓶が割れる。姉は何も言わなかったが顔を真っ赤にし、フーフーと息を荒くしてオリヴィアを憎悪の篭った目で睨みつける。

「お嬢様、()()()()()見てはいけません。さあ、お部屋に戻りましょう」

近くにいた年嵩の侍女がオリヴィアを蔑んだ目で見ながら、姉の姿を隠すように歩いて行く。本邸ではオリヴィアはゴミ以下の扱いらしい。もう、悲しむ心も残ってない。オリヴィアが居なくなれば姉の精神状態は落ち着くのだろう。10歳まで過ごした場所のはずなのに、良い思い出より辛い思い出の方が多い。オリヴィアは何の未練もなく本邸を後にした。
  

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