白い結婚2年目に白ネコになったら、冷血王と噂の旦那様との溺愛生活がはじまりました
6回表 ユリアside
「……ん」
――ここは一体どこ?
ふわふわした夢の中から目覚めると、目の前に大好きな紫水晶の瞳が目に入ってくる。
唇になんだか柔らかいものが触れていた。
(あ……)
すっと離れると、少しだけ寂しさが胸を襲ってくる。
同時に身体が軽くなるような感覚があって――。
(手足が自由に動く……)
ゆっくりと私は身体を起こした。
「ユリア……!」
大好きなヴァレンス様の嬉しそうな声が耳に届く。
「ヴァレンス様、私は……」
見慣れた天井の豪奢なシャンデリアは今は消えていて、代わりに月の光が室内を照らす。
窓の外からは夜の気持ちが良い風が吹いてきて、肌をひんやりと撫でていった。
そこではっとする。
(声が出る……!)
「ここは……? 私は……人間に戻って……きゃっ……!」
気づけば――ヴァレンス様の逞しい腕の中にいた。
柑橘系の良い香りに包まれて、なんだか幸せな心地になる。
「良かった、ユリア……」
ヴァレンス様が切なる声音で訴えてきた。
――本当に夢ではない?
ちょっとだけ不安になったけれど、彼の抱きしめてくる強さで、これが夢ではないということが分かる。
「ヴァレンス様……」
その時、月明かりで煌めく相手の瞳の中に映った自分の姿を見て――衝撃が走る。
少しだけ身体が震えてしまった。
――声も出るし、完全に人間に戻ってしまったと思っていたけれど、よく見れば違ったのだ。
「……耳が……」
白い髪の頭頂部に二つのふさふさとしたネコの耳が生えているのだった。
ざっと全身を見回すと、ふさふさの尻尾が残っているではないか。
それ以外にどうやら異変はなさそうだ。
(中途半端な姿で元に戻ってしまったのね……私がずっとネコのままでヴァレンス様に可愛がられたいだなんて思ってしまったから……)
シュンとうなだれていると、両ネコ耳も一緒にシュンと垂れてしまう。
尻尾が勝手に身体に巻き付いた。
すると――。
「ユリア、顔を上げてごらん」
彼の節だった指が私の頬に添えられる。
「今更だとお前は怒るかもしれないが……聞いてほしいことがある」
「ヴァレンス様……」
彼の言葉に、期待で胸が高揚する。
「――まだ若いお前と結婚した。世継ぎが生まれるまでは時間がまだあるからと――ただでさえ、周辺諸国からは容赦のない『冷血王』だと噂されている男だ……最初にお前に怖がられていたのは知っていた。だからこそ、焦らずに時間をかけてゆっくりと信頼を育んでから、ちゃんとした夫婦になれば良いと思っていたんだ」
――ヴァレンスの優しい想いが伝わってきて、胸がじんと熱くなっていく。
「だが、そのせいで、お前のことを追い詰めてしまうなんて思ってもみなかった……俺の責任だ。許してほしい……」
「そんな風に思ってくださっていたなんて、とっても嬉しい……ヴァレンス様に非はありません……私が勝手に嫌われているのだと思い込んでしまったのです」
顔を上げろと言われたから、相手の瞳をしっかり見つめ返す。
気づけば、目の前が潤んでしまい、ヴァレンス様の端麗な顔立ちが歪んで見えてきた。
「だけれど、今の私では……」
ネコの耳を持った女性だなんて、そんなのお伽噺や仮想でしか見たことがない。
聖女どころか魔獣だったと噂されて、ヴァレンス様の治世の汚点になってしまうかもしれないのだ。
そうなったら、魔力を持っているだけで上手く活用することが出来ない自分は、いよいよ彼の足を引っ張るだけでしかなくて……。
「ユリア、お前がネコの姿のままだと、お前の本音を聞くことが出来なくなる……だから人間に戻ってほしいと思った。だが――」
――彼の真摯な瞳がこちらを覗いてきていて、鼓動が高鳴って落ち着かない。
「俺は――お前がお前であるならば、どんな姿でも構わない。愛している」
「ヴァレンス様……」
胸の中に薔薇が咲き誇るかのようだった。
耳がひょっこり動いて、尻尾がぴんと立つ。
「ユリア、お前はどうだろうか? 悪い噂の絶えない男に好かれるなんて、嬉しくはないかもしれないが……その……」
目の前の相手が白くなったり青くなったり赤くなったり、落ち着かなくなる。
「ヴァレンス様……」
「なんだ、ユリア……?」
「貴方は、黒猫の時の方が素直なんだと思っていましたが……」
「黒猫の時?」
「ええ、黒猫の時」
「……? ああ、確かにあの黒猫は俺の半身らしいが……素直とは何の話だ?」
「いいえ、何でもありません」
――黒猫姿のヴァレンスが、先に告白してきていることに本人は気づいていないようだ。
(ヴァレンス様を間近で見るようになってから微細な変化に気づけるようになったけれど、人間の姿のヴァレンス様も十分素直な御人だわ……)
くすくす笑っていると――相手が不思議そうな瞳を向けていた。
「ふふ……おかしい……」
気づけば、悲しくて涙しそうになっていたのに、嬉し涙に変わっていた。
「何かおかしな発言をしてしまっただろうか?」
「いいえ――」
そうして――私は彼の方を見て――自然と言葉が出てくる。
「私も――どんな貴方でも……好き……です」
ヴァレンスの瞳が――爛々と宝石のように光輝いた。
「ユリア……!」
彼が私のことをギュッとまた抱きしめてくる。
彼の体温があったかくて気持ちが良くて、またふわふわと夢見心地になってきた。
しばらくして離れた後、ヴァレンスが熱情を孕んだ瞳でこちらを見つめてくる。
そのまま、彼に身を委ねていると、相手の綺麗な顔がこちらに向かって近付いてきた。
「あ……ヴァレンス様……」
唇を奪われる。
しばらく啄むような口付けが続く。
優しいキスを施されているだけなのに、鼓動はどんどん高まっていく。
「ユリア……」
一度唇同士が離れた後、再び重なり合った。
今度は深い口付けへと移行していく。
「あっ……ヴァレンス様……」
「ユリア……」
彼の成すがままになりながら、彼の広い背中にそっと両腕を回した。
ひとしきり弄ばれた後、彼がそっと離れた。
「お前のことを神聖視しすぎて……一度触れてしまったが最後、タガが外れて……お前のことを滅茶苦茶にして、嫌われてしまうのが怖かった。だけど、お前が良いと言うのなら、どうか俺の本当の妻になって欲しい……」
「あ……」
――本当の妻。
その言葉が指す意味は――。
恥ずかしくて、頬にさっと朱が差した。
だけど、どうにか相手の想いに答えたい。
「はい、もちろん……」
すると、彼がまるでネコのように、私の首筋をかぷりと食んできた。
「あ……」
首筋をペロリとなめられ、全身に快感が走る。
ひくんとネコ耳も震えた。
「あ……ヴァレンス様……」
そうして――。
「ユリア……そのネコの耳も可愛い……お前なら、なんでも可愛い……」
口付けられながら、そのままシーツの波間へと横たえられる。
そうして――。
「愛している、ユリア……二年分の俺の想いの丈をどうか受け止めてほしい……」
――二年分の愛情を注がれはじめたのだった。
「……ん」
――ここは一体どこ?
ふわふわした夢の中から目覚めると、目の前に大好きな紫水晶の瞳が目に入ってくる。
唇になんだか柔らかいものが触れていた。
(あ……)
すっと離れると、少しだけ寂しさが胸を襲ってくる。
同時に身体が軽くなるような感覚があって――。
(手足が自由に動く……)
ゆっくりと私は身体を起こした。
「ユリア……!」
大好きなヴァレンス様の嬉しそうな声が耳に届く。
「ヴァレンス様、私は……」
見慣れた天井の豪奢なシャンデリアは今は消えていて、代わりに月の光が室内を照らす。
窓の外からは夜の気持ちが良い風が吹いてきて、肌をひんやりと撫でていった。
そこではっとする。
(声が出る……!)
「ここは……? 私は……人間に戻って……きゃっ……!」
気づけば――ヴァレンス様の逞しい腕の中にいた。
柑橘系の良い香りに包まれて、なんだか幸せな心地になる。
「良かった、ユリア……」
ヴァレンス様が切なる声音で訴えてきた。
――本当に夢ではない?
ちょっとだけ不安になったけれど、彼の抱きしめてくる強さで、これが夢ではないということが分かる。
「ヴァレンス様……」
その時、月明かりで煌めく相手の瞳の中に映った自分の姿を見て――衝撃が走る。
少しだけ身体が震えてしまった。
――声も出るし、完全に人間に戻ってしまったと思っていたけれど、よく見れば違ったのだ。
「……耳が……」
白い髪の頭頂部に二つのふさふさとしたネコの耳が生えているのだった。
ざっと全身を見回すと、ふさふさの尻尾が残っているではないか。
それ以外にどうやら異変はなさそうだ。
(中途半端な姿で元に戻ってしまったのね……私がずっとネコのままでヴァレンス様に可愛がられたいだなんて思ってしまったから……)
シュンとうなだれていると、両ネコ耳も一緒にシュンと垂れてしまう。
尻尾が勝手に身体に巻き付いた。
すると――。
「ユリア、顔を上げてごらん」
彼の節だった指が私の頬に添えられる。
「今更だとお前は怒るかもしれないが……聞いてほしいことがある」
「ヴァレンス様……」
彼の言葉に、期待で胸が高揚する。
「――まだ若いお前と結婚した。世継ぎが生まれるまでは時間がまだあるからと――ただでさえ、周辺諸国からは容赦のない『冷血王』だと噂されている男だ……最初にお前に怖がられていたのは知っていた。だからこそ、焦らずに時間をかけてゆっくりと信頼を育んでから、ちゃんとした夫婦になれば良いと思っていたんだ」
――ヴァレンスの優しい想いが伝わってきて、胸がじんと熱くなっていく。
「だが、そのせいで、お前のことを追い詰めてしまうなんて思ってもみなかった……俺の責任だ。許してほしい……」
「そんな風に思ってくださっていたなんて、とっても嬉しい……ヴァレンス様に非はありません……私が勝手に嫌われているのだと思い込んでしまったのです」
顔を上げろと言われたから、相手の瞳をしっかり見つめ返す。
気づけば、目の前が潤んでしまい、ヴァレンス様の端麗な顔立ちが歪んで見えてきた。
「だけれど、今の私では……」
ネコの耳を持った女性だなんて、そんなのお伽噺や仮想でしか見たことがない。
聖女どころか魔獣だったと噂されて、ヴァレンス様の治世の汚点になってしまうかもしれないのだ。
そうなったら、魔力を持っているだけで上手く活用することが出来ない自分は、いよいよ彼の足を引っ張るだけでしかなくて……。
「ユリア、お前がネコの姿のままだと、お前の本音を聞くことが出来なくなる……だから人間に戻ってほしいと思った。だが――」
――彼の真摯な瞳がこちらを覗いてきていて、鼓動が高鳴って落ち着かない。
「俺は――お前がお前であるならば、どんな姿でも構わない。愛している」
「ヴァレンス様……」
胸の中に薔薇が咲き誇るかのようだった。
耳がひょっこり動いて、尻尾がぴんと立つ。
「ユリア、お前はどうだろうか? 悪い噂の絶えない男に好かれるなんて、嬉しくはないかもしれないが……その……」
目の前の相手が白くなったり青くなったり赤くなったり、落ち着かなくなる。
「ヴァレンス様……」
「なんだ、ユリア……?」
「貴方は、黒猫の時の方が素直なんだと思っていましたが……」
「黒猫の時?」
「ええ、黒猫の時」
「……? ああ、確かにあの黒猫は俺の半身らしいが……素直とは何の話だ?」
「いいえ、何でもありません」
――黒猫姿のヴァレンスが、先に告白してきていることに本人は気づいていないようだ。
(ヴァレンス様を間近で見るようになってから微細な変化に気づけるようになったけれど、人間の姿のヴァレンス様も十分素直な御人だわ……)
くすくす笑っていると――相手が不思議そうな瞳を向けていた。
「ふふ……おかしい……」
気づけば、悲しくて涙しそうになっていたのに、嬉し涙に変わっていた。
「何かおかしな発言をしてしまっただろうか?」
「いいえ――」
そうして――私は彼の方を見て――自然と言葉が出てくる。
「私も――どんな貴方でも……好き……です」
ヴァレンスの瞳が――爛々と宝石のように光輝いた。
「ユリア……!」
彼が私のことをギュッとまた抱きしめてくる。
彼の体温があったかくて気持ちが良くて、またふわふわと夢見心地になってきた。
しばらくして離れた後、ヴァレンスが熱情を孕んだ瞳でこちらを見つめてくる。
そのまま、彼に身を委ねていると、相手の綺麗な顔がこちらに向かって近付いてきた。
「あ……ヴァレンス様……」
唇を奪われる。
しばらく啄むような口付けが続く。
優しいキスを施されているだけなのに、鼓動はどんどん高まっていく。
「ユリア……」
一度唇同士が離れた後、再び重なり合った。
今度は深い口付けへと移行していく。
「あっ……ヴァレンス様……」
「ユリア……」
彼の成すがままになりながら、彼の広い背中にそっと両腕を回した。
ひとしきり弄ばれた後、彼がそっと離れた。
「お前のことを神聖視しすぎて……一度触れてしまったが最後、タガが外れて……お前のことを滅茶苦茶にして、嫌われてしまうのが怖かった。だけど、お前が良いと言うのなら、どうか俺の本当の妻になって欲しい……」
「あ……」
――本当の妻。
その言葉が指す意味は――。
恥ずかしくて、頬にさっと朱が差した。
だけど、どうにか相手の想いに答えたい。
「はい、もちろん……」
すると、彼がまるでネコのように、私の首筋をかぷりと食んできた。
「あ……」
首筋をペロリとなめられ、全身に快感が走る。
ひくんとネコ耳も震えた。
「あ……ヴァレンス様……」
そうして――。
「ユリア……そのネコの耳も可愛い……お前なら、なんでも可愛い……」
口付けられながら、そのままシーツの波間へと横たえられる。
そうして――。
「愛している、ユリア……二年分の俺の想いの丈をどうか受け止めてほしい……」
――二年分の愛情を注がれはじめたのだった。