一大決心して大学院に進学したら、なぜか指導教官の外科医に溺愛されてます
御崎先生は納得したように一つ頷いた。
「……そうだと思った」
彼は手元のタブレットを置き、淡々と事実を告げた。
「……血液検査、hcG陽性だったんだ」
「え……」
「なんとなく、高橋さん最近体調悪そうだったし。顔色は青いし、吐き気もあるみたいだったし。……勘で、ついでにオーダーした」
勘。
その一言で片付けられた私の不調。
毎週顔を合わせていた坂上先生が「夏バテ」と信じたものを、この人は一瞬の観察で見抜いていた。
その事実が、坂上先生には何よりも痛烈な皮肉として刺さっているはずだ。
「よ、陽性って……。でも、嘘……」
私が呆然と呟くと、御崎先生は私の動揺を見透かしたように、部屋の隅にある装置を顎でしゃくった。
「信じられないなら、エコー見るか?」
「……!」
「ERの備品だけど、ちょうど遊んでる機械あるみたいだ。
水瀬ーー知り合いの救急医が貸してくれた」
彼は慣れた手つきで超音波診断装置の電源を入れ、プローブを手に取った。
「……多分、hcGの数値からして14、5週だろうし」
彼は私の腹部にゼリーを塗りながら、坂上先生の方をチラリと見た。
「経膣じゃなくても、映ると思うよ」
その配慮──「服を脱がせる必要はない」というメッセージに、坂上先生の強張った肩がわずかに下がる。
御崎先生はプローブを私の下腹部に当てた。
ザザッ、というノイズ音。
そして、モニターに白黒の断面図が浮かび上がる。